山域区分の難しさ
山をグルーピング(エリア分割)するにあたって「山域」を設定したいのだが、どう区分するのがよいのか。この区分も難しい。
(私家版)「京都百名山」の「山域」をどういう考え方で区分したか説明する。
- 一般に言われている「山域」とは
- 「山域」という言葉は広辞苑をはじめとする国語辞書には載っていない。
- したがって通常の日本語ではないようです。しかし登山者の間ではよく使われる。
- 直感的には、北アルプス・南アルプス、海外ではヒマラヤなど。後述の「山脈、山地」とは少し異なる。
- 「山のつならり」を表す言葉はある。
- 山脈・山地・高地
- 広辞苑によれば、「山地」は「山の多い地」、「山脈」は「特に顕著な脈状をなす山地」とある。
- 国土地理院と文科省は、日本の山脈・山地を整理して、呼称も統一した(地図などの表記している)。
- 京都府には、丹後山地、笠置山地、比良山地(の各一部)がある。
- 国土地理院は、さらに「山地のうち、起伏はさほど大きくないが、谷の発達が顕著であって、表面の押し並べて平坦な地域」を「高地」と呼んでいる(地図にも表記している)。
- しかしすべての山が山脈・山地・高地に属しているわけではないので、山エリア分割に「山脈・山地・高地」を使うことはできない。
- “賢いことに”「日本の山岳標高一覧−1003山」(平成3年8月、建設省国土地理院)も、日本百名山(深田久弥)も、山をグルーピング(エリア分割)していない(単に山を並べているだけ)。
- 以上のことから新たに「山をグルーピングするエリア」を「山域」と呼ぶことにして、以下「山域」を規定したいと思う。
- (すぐに思いつく)「行政区分」(市、郡など)は山エリア分割には相応しくない。
- なぜなら行政区分の境界は、高い山(のつらなり)に設定することが多い。
- したがって山は、県境、市境、市郡境に存在することが多くなる。
- 逆に「低い土地」(例えば、川、盆地など)を山エリア分割の境とするのが良さそうである。
- 可能な限り、山脈・山地を分割せず、現行の行政区分も尊重して、川・盆地などを境にしたエリア分割を考える。
- ただし「エリアの数」も多くなりすぎないようにする(細分化し過ぎるとかえってわかりにくくなる)。
- 「京都百名山」では(暫定的に)7つの「山域」に分割した。
- (少し脇道に逸れますが京都の山域設定の関連で)丹波と丹後の違いも結構難しい(ので調べました)。
- 「丹波」の方が古くから呼称されていた。亀岡の湖に「丹色の波」が立つことから「たにわ」と呼ばれたことに始まるらしい。
- 和銅6年(713)「令制国」を定めたとき、丹波の一部が分離されて「丹後」ができた(以降概ねこの二国体制が維持される)。
- 亀岡・福知山(・綾部)・篠山が丹波、舞鶴・宮津・半島が丹後となる。
- 江戸幕府の藩で見ると、丹波亀山(亀岡)・福知山・綾部・篠山・園部・山家・柏原藩が丹波、田辺(舞鶴)・宮津・峯山藩が丹後となる。
- 分離の時は、豊・肥・筑・備・越などのように「前・後」「前・中・後」が付けられるのが普通だが、丹は「丹前・丹後」にはならなかった(「丹波」という名前をなくしたくなかったか)。
- この二国体制は明治になって破壊された。
- 明治4年(1871)の廃藩置県を経て、明治23年(1890)「府県制」で丹波は分割されて、京都府と兵庫県に分かれた(丹後は京都府に移行した)。
- この経緯は不明(戊辰戦争の恨みでもあったか)。
- 京都府船井郡丹波町は2005年の町大合併のときわざわざ「京丹波町」と「京」を付けた。
- 一方兵庫県丹波市は2004年の町大合併(氷上町、柏原町など)のとき(単に)「丹波市」と名付けること(名前の独占化)について、旧丹波国の兵庫県篠山市・京都府から大反発をかった。
- 「丹波」の名前はいろいろ「尾を引いている」。
- 結局令制国で見ると、京都府は「丹後一国」「丹波半国」「山城一国」から成っていることになる。
- 「山城」も表記が難しく、歴史的には「山代」「山背」「山城」が変遷したり復活したりしている。