昔からの東山越え (INDEX:索引へ)
- 1.東山三十六峰特定作業でも利用させていただいた文献「雍州府志」(黒川道祐著)を紐解くと、「凡そ、四方自り京師に入るに、七道有り。これを七口と謂う。・・・七口の外、京師に入るの道、数箇所あり」として、次の名を挙げている。
「越え」については「倭俗に、坂路を経て捷径に行くを、何の越、某の越と称す」と記している。
- 龍華越
- 東北に、龍華越有り。八瀬の里自り、北のかた山路を歴て、近江の国、大溝の北に出ずるの道なり。
- これは、八瀬から龍華(現在の伊香立か)を経て大溝(現在の高島)へ抜ける道(途中越え)と思われる。
- 東山越えというより、若狭越え(水坂峠越え))に近い。
- 志賀の山越
- 東山自り、志賀の山越道有り。
- 志賀の山越は、山中越の南に在り。
- 照高院(銀閣寺の北にあった「後高倉院の北白河殿」か)の東に坂路有り。是れ江州志賀、東坂本に赴くの道なり。所謂志賀の山越、是れなり。白川自り行くこと半里、山中の宿あり。宿の西、路傍に二つの石地蔵有り。一は江州に向い、一は城州に向う。
- 山中越と混同している節が強い。「志賀の山越」を志賀峠とすると「山中越の南」にはありえない。
- 「東山七越え−B志賀越え」に含めた。
- 山中越
- 北白川自り、山中越あり。
- 白川山(瓜生山のこと)の東南に、近江に超ゆる路有り。是れを山中越と謂う。又、是れを今道と謂う。
- 「東山七越え−B志賀越え」の全ルートに相当する。
- 山中を越えた先は、志賀峠越えのルートとして設計した。
- 唐櫃越
- 一乗寺村自り、叡山、無動寺に越ゆるの路有り。
- 「東山七越え−@比叡越え」の無動寺ルートに相当する。
- 如意越
- 洛東、如意が嶽自り、近江の国、園城寺の上に出ずる所の路有り。
- 「東山七越え−C如意越え」の全ルートに相当する。
- この山道は、昔からずっと消えないで続いている。
- 小関越
- 下粟田(神明山の麓を指す)自り、北の山に傍いて園城寺の麓に出ずる所の路なり。
- 当時(江戸時代初期のこと)はきちんと京側まで繋がっていたようだ。
- 現在ではルートは不明確だが、「東山七越え−D小関越え」としてルート設計した。
- 滑谷越
- 古東国に赴く者、五条の橋自り清水山の南滑谷を歴、山科を過ぎ、大津、松本に出ずるの路なり。
- 滑谷は、清閑寺山と鳥部山との間、山径、常に湿う。故に、滑谷と号す。古え、東関自り京師に入るの路、山科自り滑谷を経、五条の橋に出ず。若松谷、小松谷、此の道の南に在り。
- 大津海道
- 今の如き東国に赴く者は、専ら三条の橋自り、下粟田口を過ぎ、大津に出ずる。是れ、近世(江戸時代初期のこと)の事。
- 現在の、三条−蹴上−(日ノ岡峠)−五条の分れ−山科−(逢坂山峠)−大津のルート(国道1号線)に相当する。
- あまりに「自動車道」化されているため「東山七越え」からは外した。
- 汰石越
- (大津海道)の南に、汰石越有り。東山、蓮華王院の南自り、山科、西の山村に出ずる所なり。
- 「東山七越え−F汰石越え」の七条−山科間に相当する。
- 名称の記載なし
- 2.「花洛名勝図会」(原著:平塚飄斎)などの文献、その他の「口伝」も拾い上げて“肉付け”すると、次のようになる。
- 白鳥越え
- 「青山越え」の別名か。
- 白鳥山は壺笠山の東にある別の山。この山を越えるのが「白鳥越え」。「A青山越え」のバリエーション・ルートと考えるのがよい。
- 今路越え
- 「今道越え」と書くこともある。
- 「山中越え」の別名、「志賀越え」の別名との説がある。
- 上述のように「志賀越え」に一本化して、この「B志賀越え」の別名と考えるのがよい。
- 藤木越え
- 大日山の東、粟田山を経て、三井寺に至る小道を藤木越という。
- 「下粟田山(神明山)」の間違いか(粟田山を越えて三井寺へ出るのは余程の大回り)。とすれば「D小関越え」のバリエーション・ルートと考えるのがよい。
- 逢坂越え
- 逢坂山(標高325m)の南側を抜ける山道。
- 逢坂山(標高325m)の北側を抜ける山道が「小関越え」。
- 「東山七越え−E瀋谷越え、およびF汰石越え」の追分−大津間に相当する。
- 「大関越え」とも呼ばれた。
- 苦集滅道(くづめぢみち)
- 五条から阿弥陀ヶ峰の北麓・清閑寺の南梺(ふもと)東西の往還をいふ。いまはこれを瀋谷(しるたに)・滑谷(しるたに)と号す。
- または渋谷越ともいふ。
- 概ね「東山七越え−E瀋谷越え」の五条−山科間に相当する。
- 汰石越(すべりいしごえ)
- 七条から智積院の南より東の山手をすべり坂と云ふ。峠を越せば山科西の村なり。
- 古名瓦坂。大仏瓦坂から始まるからか。途中の茶店の東側をすべり石坂という。
- 「滑石越え」と書くこともある。
- 概ね「東山七越え−F汰石越え」の七条−山科間に相当する。