（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

唐風の坊名 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 紛らわしい坊の定義
  • 条坊制では「南北の列全体」を指す。
    • はずであったが、（後述の経緯で）
  • 「唐風の坊名」が導入された。
    • （概して言えば）「東西の行半分を指す」考え方である。「条の考え方」とほぼ同じ（半分になっただけ）。

平安京の条坊制のイメージ	新たに導入された「唐風の坊名」	（参考）長安城の坊
「条」は行全体を指す（例：四条） 「坊」は列全体を指す（例：二坊） 色塗りの重なり＝「条坊区画」	（洛）は「洛陽城」からの転用 （長）は「長安城」からの転用	長安城の坊は「条坊区画」であった （世界の歴史「六朝と隋唐帝国」（社会思想社）から）

• 「唐風の坊名」の導入
  • 桓武天皇が平安京を創ったときには、まだ無かった。
  • 明確な導入時期ははっきりしないが、弘仁貞観期（嵯峨・清和天皇）らしい。
    • 「日本史小辞典（2016, 山川出版社）」によれば
      • 唐風文化摂取の気運が高まった嵯峨朝を中心とする9世紀初頭には、殿宮・門号を唐風に改め、京内各坊にも中国風の坊名が冠せられた。右京・左京を長安・洛陽と称するのもこの時期からである。
    • 弘仁７年(816)嵯峨天皇が「唐風の名称にせよ」との命令を出した（らしい）。
  • 長安城でも「坊は条坊区画」であったのに、なぜ「東西方向に坊名」を付けたのかは不明。不明だらけ。
    • かつ、北の方では「左京と右京で同じ坊名」なのに、三条以南では「左京と右京で異なる坊名」にしたのかも不明。
    • 右京の南はともかくとして（多分街として整備されていなかった）、「桃花坊」は唐からの転用ではない。この理由も不明。

• 今に残る「唐風の坊名」
  • 小学校名。ただし現在は「光徳小学校」を残すのみ。
    • 銅駝小学校：戦後中学校に改組、現在「銅駝美術工芸高校」に。
    • 淳風小学校：平成２９年(2017)閉校。
    • 陶化小学校：平成２４年(2012)閉校。
    • 崇仁小学校：平成２１年(2009)閉校。
    • 安寧小学校：平成８年(1996)閉校。
    • 教業小学校：平成４年(1992)閉校。
  • 地区の呼び方、学区名。通称として「今も残っている」ところが多い。
    • 教業、銅駝、淳風、安寧、光徳、崇仁、陶化。
  • （その他補足）
    • 「毓財坊」はなんと読むのか。いくざい坊であろう。
    • 「豊財坊」
      • 『三代実録』に「貞観１６年(874)豊財坊門が倒れる」との記事がある（まあ使われていたのだろう）。
    • 「宣風坊」
      • 『菅家後集』（菅原道真）に「宣風坊北 新栽処梅花 ・・・」（梅花、延喜２年(902)）という漢詩が載っている。

• （参考）「宮城門の名称」
  • 嵯峨天皇の命により「宮城門の名称」も変更になった。こちらは今も唐風の名称が使われている。以下にいくつかの例を示す（発音が似た美しい漢字が選ばれた） 。

平安京発足時の名称		新たに呼ばれた「唐風名称」		唐風名の小学校
表記	読み	表記	読み	唯一残る「光徳小学校」
大伴門	おおとも	応天門	おおてん
建部門	たけるべ	待賢門	たいけん
伊福部門	いふきべ	殷富門	いんぷ
佐伯門	さえき	藻壁門	そうへき