山情報特定の難しさ
山情報(ここでは、緯度・経度・標高としておく)を特定することは想像以上に難しい。
一度ここできちんと説明しておこう。
- そもそも山情報の前に山の特定も難しい
- なにをもって「山」と定めるのか。
- 富士山の山頂部には多くの峰がある。剣ヶ峰、白山岳、久須志岳、大日岳など。しかし1つ1つの峰は山とは呼ばれず、全体でもって富士山と呼ばれている。遠くから見ればそれは自然である。
- 鹿島槍ヶ岳の北峰と南峰は約40分の行程があるが1つの山と見なされているし、薬師岳から1時間以上も離れている北薬師岳も薬師岳の一部と見なされている。
- 深田久弥の日本百名山では、赤岳、天狗岳、権現岳、阿弥陀岳、横岳、硫黄岳などひっくるめて、かなり乱暴に、八ヶ岳を1つの山としている。
- 穂高岳にも多くの峰がある。前穂高岳、北穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳。これらは普通すべて別の山と見なされる。別の山にしたいと考えている登山者が多いということか。
- 逆に、西穂高岳近くには独標もあるが、これは山と見なされず、西穂高岳に含まれる。
- 南真砂岳(2713m)は山だが、1時間半ほど東にある真砂岳(2862m)は(名称の優位性は評価されず、野口五郎岳(2924m)の一部と見なされ)山とは認められていない。
- 結局は「日本の山岳標高一覧−1003山」(平成3年8月、建設省国土地理院)にあるように昔からみんなが認めている“あのあたりの高み”を山と呼ぶしかないようです。
- 山情報(緯度・経度・標高)の特定
- 山情報(緯度・経度・標高)を特定するにあたっては“あのあたりの高み”では困る。一点を定めなければならない。
- 山の一点を定めるには、なにをもって代表させるかが課題になる。
- さしあたっては、山を代表する一点には「山頂」で代表するのが常識的であると考えられる(これはほとんどの人の同意を得られると思う)。
- ところが山頂の特定が難しい。
- これも常識的には「山の最高点」であろうが
- 最高点はどうやって見つけるのか。
- 原理原則的には「山頂と思われる領域全部の標高を測定する」ことになり、極めた煩雑な作業になる。
- そこで建設省国土地理院は、1003個の山に限って、原理原則の煩雑な作業を行って「100山の山情報を特定した」。その成果が「日本の山岳標高一覧−1003山」(平成3年8月、建設省国土地理院)である。
- 三角点があっても、それは山頂でないこともある。
- 「燧ヶ岳」の三角点は俎嵒(2346m)であるが、国土地理院はそのすぐ西にある柴安嵒(2356m)を山頂としている。後者の方が最高点になっているからであろう。
- 深田久弥の日本百名山では(この状況を無視して(知らなくて?))前者を山頂としている。
- (注)燧ヶ岳の山名は通常俗字(山かんむりに、品)が使われているが、コンピュータでは外字になるのでここでは岩の本字である「嵒(くら)」(上下逆)を使わせてもらった。
- 大滝山、御嶽山、(甲斐)駒ケ岳、恵那山、御在所山、愛宕山、鷲峰山なども同様である。
- それはそもそも当たり前の話であって三角点は地形図作成のために設置する「点」であって、山頂を示すものではないのだから。三角点は「他の三角点から見通しのきく位置」に設定される(そうしないと測量できないという当たり前の話)。
- 標高点があっても、それは山頂でないこともある。
- 建設省国土地理院は、地図を作成して刊行するのが仕事であって、地図に山頂の高さを表示するのは仕事ではない、と言っている。
- したがって硬直的に言えば、日本の山は上述の1003山だけが山情報が特定されており、
日本のそれ以外の山の山情報は公式には特定されていないことになる。
- そこで、私のHPの内
- 「日本の150高山」では
- 作成の経緯からわかるように、山情報はすべて「日本の山岳標高一覧−1003山」(平成3年8月、建設省国土地理院)に依存した(したがって難しい問題はすべて建設省国土地理院に“丸投げ”した形になる)。
- 「東山三十六峰」では
- 山の特定も難しかったので「地形図(または数値地図)の情報」と「(煩雑さを避けずに)何回も歩き回ってGPSで万遍なく私が測定した値(実測値を統計処理)」を併記した(詳細はこちらを参照してください。)
- 「京都百名山」では
- (煩雑さを避けて)「地形図の情報」から以下の順序で判定して定めた。
- 地形図上の“山のあたり”に「三角点があって」、“山のあたり”の最高点になっていると思われる場合は、三角点情報を採る。
- 地形図上の“山のあたり”に「標高点があって」、“山のあたり”の最高点になっていると思われる場合は、標高点情報を採る。
- 地形図上の“山のあたり”を「カシミールなどのツールで探し回って」(実際に歩き回る代わりに)、“山のあたり”の最高点になっている位置の情報を地形図から読み取る(国土地理院の写真測量にやや類似)。
- かくのごとく山情報の特定は難しい。