（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

（平安京の）羅城門 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 古代中国の都市（例：長安）から繙けば
  • 羅城とは「都市を取り囲む城壁」のことで
  • 羅城門とは「羅城に開かれた門」のこと（一般名詞）。
  • 因みに、長安に「朱雀門はあるが、羅城門（固有名詞）はない」。城郭の南正面（朱雀大路の南端）の門は「明徳門」。
  
  
• 【広辞苑第六版】は（日本に即して）「羅城門」とは
  • 平城京・平安京の正門。朱雀大路の南端にあり、北端の朱雀門と遥かに相対する門
  • 平安京の（羅城門は）東寺の西にあり、二重閣の瓦屋造、屋上に鵄尾（しび）を置く門。南北に各５階の石段があった
  • とある（固有名詞として扱っている）。

中国・西安に残る城門（明代のもの）	平安京の枠組み	平安京の羅城門の模型
城壁＝羅城の上に築かれている、固有名詞は別として、これも「羅城門」（長安の頃もこんな感じか）	航空写真(from TV program)	「１／１０」サイズ、JR京都駅前に置かれている 扁額は掲げられていない

• 羅城門の歴史
  • 平安京遷都（延暦１３年(794)１０月２２日）に間に合わせるように造ったので（１００％完工かどうかはともかく）、延暦１３年(794)構築と考えてよいだろう。
    • 遷都の日、桓武天皇は「羅城門から入京」した。
  • 弘仁７年(816)（８月１６日、嵯峨天皇の在位）大風によって倒壊、しかしすぐに再建された。
    • 構造上の欠陥（第１層の規模に比較して第２層が「高過ぎ・重過ぎ」）のため「風には弱かった」。
  • 天元３年(980)（７月９日、藤原時代）暴風雨によって再度倒壊、以降再建されなかった。
    • 遣唐使も廃止され（寛平６年(894)）、渤海との交通も絶え（延長８年(930)頃）、外国人賓客の入京も稀になったので、頑張って再建する価値が少なくなったか。
    • 羅城門は２００年弱の寿命で（平安京は１１００年弱）、羅城門近辺は荒れ放題。いつしか「鬼の棲むところ」となった。

現在の羅城門（羅城門遺址）

元の場所（現在の唐橋羅城門町）に石碑のみが残る

• 羅城門の構造
  • 重層入母屋造、瓦屋根。金色の鴟尾が付いている。南北側に「５段の石段」。
  • 幅＝約３５ｍ、奥行＝約９ｍ、高さ＝約２１ｍ（２階建て）。幅：奥行：高さの比率＝約４：１：２.3、かなり薄っぺらで高い建物。
    • ２層部分には、高さ６尺を越える神像・仏像が置かれた。その内の「兜跋毘沙門天立像」（国宝）は（羅城門倒壊後）「東寺」に移され、現在も「東寺」に収蔵されている（これだけが残った）。
  • 正面柱間＝７間で、そのうち中央５間に戸が入る構成。壁は白土塗。正面には「羅城門」と書かれた扁額が掲げられていた。
  • 門の南側の堀（幅１丈＝約３ｍ）には橋が掲げられていて（下の図を見ればわかる）「唐橋」と呼ばれた。今は「地名」で残る。

羅城門の復元構造図（from平安京提要（古代学協会））

• 羅城の規模
  • 羅城門の模型の写真で「左右の袖（白い壁）」、復元構造図で「左右の低い塀」が「羅城」。
  • 長安の都市と同じように作れば「羅城の長さ＝東京極大路〜西京極大路＝約４．５ｋｍ」（になったはず）。
  • （明確な資料は見つからないのですが）実際には「朱雀大路の前だけ」ちょこっと造ったようです。
    • 「朱雀大路の幅＝約８４ｍ」であるから、羅城の幅（羅城門も含めて）＝１５０ｍ程度、高さ＝４ｍ弱。

羅城のイメージ
ＣＧ(from TV program)、（この作画は）少し朱雀大路が狭過ぎるし 南側に「堀、唐橋」が抜けている	平安創生館に展示の「平安京復元模型」から 羅城門北の「九条大路」には「西寺」と「東寺」の「五重塔」が聳えていた

• 羅城門の読み
  • 呉音では「らじょうもん」、漢音では「らせいもん」。
    • 平安時代の書物にも、「らしょう」「らいしょう」とあったり、「らせい門」「らいせい門」とあったりする。
  • 室町時代に謡曲「羅生門」ができて、その影響からか「らしょうもん」の読みが一般化したようです。
    • 江戸時代の芭蕉も「荻の穂や 頭をつかむ 羅生門」と詠んでいる。
    • 芥川龍之介、火野葦平も、小説のタイトルは「羅生門」。黒澤明の映画も「羅生門」。