（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

西京の読み方 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 一般に「西」は
  • 訓読みで、にし、
  • 音読みで、さい（呉音）、せい（漢音）と読む。
    • 一般に「呉音」の方が古く（中国の南北朝時代）、「漢音」の方が新しい（唐の時代）。

• 京都で聞かれる代表的な呉音
  • 西院（さいいん or さい）
    • 淳和天皇（在位：823-833）の離宮「西院」の名を引き継いでいるので、呉音（さい）の読みは古い。
  • 西寺（さいじ）
    • 西寺は元慶６年(882)に建立を始めた。その頃から「さいじ」と呼ばれたはず。
  • 洛西（らくさい）
    • 西京（にしきょう）区役所の「洛西支所」は「らくさい」。
    • 「洛西ニュータウン」ができたのは昭和５１年(1976)だから、新しい名前のはずですが、なぜか「らくさい」と読む。
  • 西京（さいきょう）が付く名前は多い。
    • 西京味噌、西京漬、西京高校（昭和２３年(1948)改称）など。これらは明治になって「東京」ができたために、京都が「西京」と呼ばれたことに起因する。
  • まだ他にも西行（さいぎょう、1118-1190）、西国街道（さいごく）などもある。

嵐電「西院」駅	西寺	阪急「洛西口」駅
嵐電はハッキリ、西院＝「Sai」とローマ字で書いている	“相方”の東寺は、（漢音で）とうじと読む。この辺も悩ましい	阪急「洛西口」駅も「らくさい」と読む

• 京都で聞かれる代表的な漢音
  • 西山（せいざん）浄土宗
    • 浄土宗の一派。法然（1133-1212）の弟子「証空」が唱えた西山派が更に分派して「西山浄土宗」などができた。光明寺がその総本山になっている。
  • 一般名としての「洛西」（京都の西の郊外）は、広辞苑では「らくせい」と読ませている。
    • 広辞苑は京都のことをわかっていない、洛西（らくさい）支所が聞いたら怒るかも。京都には漢音（せい）はあまり残っていないようです。
  • 京都以外の一般名詞で辞書を引くと漢音（せい）は多い。
    • 西洋、西暦、西経（北緯、南緯、東経の仲間）、北西（方位として）、西南戦争など。

西山浄土宗の「光明寺」

西山（せいざん）浄土宗の「光明寺」は「西山（にしやま）」にある

• 京都で聞かれる代表的な訓読み
  • 西洞院大路（にしのとういん）
    • 平安京当初（794-）からある通りなので、「にし」の訓読みは相当古い。東洞院大路と共に今も残る。
  • 西面の武士（にしおもて）
    • 後鳥羽上皇（天皇在位：1185-1198）が鎌倉に対抗するために作った。「さいめん」の武士とも読まれます（呉音）。
  • 西陣（にしじん、応仁元年(1467)）
    • 今もなお西陣織に名を残している。
  • 善峯寺の山号も西山（にしやま）
  • 以上のように、「西の方」としての接頭語で「西」（にし）と読ませる例は多い。
    • 例えば、西八条第、西本願寺など。
  • さらに地域名としての「西山」はせいざんではなく、西山（にしやま）と読む。訓読み（にし）も多い。

西洞院通	西陣の碑	中京区西ノ京にある「JR円町駅」
「三条上ル」にある「後藤利法衣店」の隣に「西洞院」の名前を冠した建物が見られる	片や「東陣（とうじん）」（漢音）は花の御所に置かれた	「西ノ京」は「中京区」の「冠」の一つ。「旧葛野郡西京村」に当たる（この村はなんと読んだのか）

• 「西京」を中心に読みの整理
  • 表で整理すると次のようになる。東京も西京も読みは“変”です。

    漢字	訓読み	音読み（漢音）	音読み（呉音）
    東	ひがし	とう	つう
    京	みやこ	けい	きょう
    西	にし	せい	さい

    
    
  • 明治に「東京」ができたとき、漢音で「とうけい」と読ませるべきだった。
    • 「首都」は（「京の都」のイメージが沁みついているため）「きょう」と呼びたいということか、次第に「漢呉混在のとうきょう」になってしまった、ようです。
      • 「きょう」と呼びたいのなら「つうきょう」（呉音で通す）で良かったのですが、これは受け入れられなかった。
      • （蛇足）東京にできた「西東京市」は訓漢呉３種混在のひどい読み方をさせます。
  • 昭和５１年(1976)「西京区」を作った時、「さいきょう」区（呉音）と読ませれば良かったのに、なぜか「にしきょう区」（訓呉混在）と読ませた。
    • 「西京漬」ばかり想像されるのが嫌だったか、「左京（さきょう）区」と間違えやすくなると思ったのか。
    • （再度）蛇足ながら「にしぎょう区」と濁ることはありません。

• （蛇足ついでに）西域の読み（私の好きな地域。現在は概ね中国の「新疆ウイグル自治区」あたり、私の呼び方では「東トルキスタン」）
  • 「域」は（音読み）「いき」（漢、呉とも）。
  • だから、（呉音で）「さいいき」、（漢音で）「せいいき」、どちらで読んでも構わない。
    • 広辞苑は「どちらもある」としながら、「せいいき」（漢音）を優先して取り上げている。
    • NHKは「聖域」と聞き取られないように「さいいき」（呉音）を優先的に使うようにしているとのこと。