（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

文子天満宮 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 文子とは
  • 菅原道真の乳母であった多治比文子（たじひの あやこ）である（らしい）。
  • 「多治比文子」について調べると
    • 【朝日日本歴史人物事典】によれば『平安時代の巫女。平安京の右京七条二坊十三町の住民』とある。
    • 北野天満宮によれば『西ノ京に住んでいた』とある（現在の「西ノ京」≒右京二条・三条二坊だから上記事典とは異なる、「西ノ京」＝右京という意味なら上記事典と一致）。
    • 「乳母」であったと主張するのは関連の「天満宮」が多い。
    • 要は「正体は不明」らしい。

�@右京七条二坊十三町は「西市」のさらに西 一般民衆の住む所でこんな大きな敷地を持つ人などいない、この一角に住んでいたか 周辺は、野原・畑ばかり

• �A文子天満宮（左京七条）（先頭へ）
  • 現在の「間ノ町通花屋町下ル」、往時の「左京七条四坊二町」に文子天満宮（左京七条）がある。
    • 神社の謳い文句は「天神信仰発祥の神社、北野天満宮の前身神社」とある。
    • 神社の由緒によれば「文子が自分の家の庭に小さな祠をもうけ道真公を拝んでいた（文子の家の庭の小さな祠�@＝＞�A北野天満宮の前身神社＝（北野天満宮創建後）文子天満宮）。そんな折『北野に祀れ』との宣託を受け（天慶５年(942)）北野天満宮を創った」とある。
      • 菅原道真が生まれたのは承和１２年(845)、流刑になったのは昌泰４年(901)、死んだのは延喜３年(903)、本官に復されたのが延喜２３年(923)（４月）。それでも延長８年(930)には道真の怨霊で清涼殿が落雷で焼失した。そんな折（宣託があったか）天暦元年(947)「北野天満宮」を創建した。
      1. 多治比文子が乳母だとすると、宣託を受けた時は「１００歳」を越えていたことになる。
         • 天満宮の主張とは異なり「乳母」でなかった可能性が高い。
      2. 「文子が自分の家の庭に小さな祠をもうけ道真公を拝んでいた」のは、道真が流罪になった昌泰４年(901)以降。乳母だとすれば「７０歳以降」（ありうる話）。
         • 天満宮の主張とは異なり「宣託を受けたのは文子ではない」可能性が高い。いずれにしても、どこかおかしい。
  • それではこの神社はどう創設されたか（名称変更したか）、この神社は自らを語っていない。
    • 「右京七条二坊十三町の小さな祠」をいつどうやって「左京七条四坊二町（この地）」に移したのか（�@→�A）。
    • 文子天満宮（北野）によれば「文子の住宅跡は神社につくり改め文子天満宮と称されてきたが、やがて西ノ京に移された」とあるので
      • （善意に解釈すれば）神社につくり改めたとき、この地（左京七条）へ移った（�@→�Aか）ということになりそう。

�@多治比文子の（当初）住んでいた所	�A文子天満宮（左京七条）
「佐井通七条北東角（右京七条二坊十三町）」あたり、「西七条北月読町」。小さな祠は無い	「間ノ町通花屋町下ル（左京七条四坊二町）」にある文子天満宮（�@→�Aか）

• �B文子天満宮舊址（西ノ京、延喜５年(905)）（先頭へ）
  • 現在の「天神通妙心寺道上ル」（上京区北町）、往時の「右京一条二坊七町」に「文子天満宮舊址」がある。
  • 【文子天満宮（北野）】によれば「文子の住宅跡は神社につくり改め文子天満宮と称されてきたが、やがて（多分、延喜５年(905)）この地（西ノ京）に移され、明治６年(1873)までこの地にあった」とある。
    • 住宅跡で文子天満宮につくり改め（西ノ京に）移設したのなら、�@→�B。
    • （上記善意解釈）住宅跡から左京七条の地に移して（さらにやがて西ノ京で）文子天満宮につくり改めたのなら、�@→�A→�Bということになる。
    • 「やがて（→�B）」というのがいつなのかは不明。延喜５年(905)とするのが、矛盾が少なそう。

�B文子天満宮舊址（西ノ京）	�C文子天満宮（北野）
「天神通妙心寺道上ル（右京一条二坊二町）」にある（�@(901？)→�A(？)→�B(905)）、1873「舊址」になる）	（�B→�C）明治６年(1873)からは北野天満宮境内にあり続けている

• �C文子天満宮（北野、明治６年(1873)）（先頭へ）
  • 北野天満宮の境内（北門近く）に「末社」文子天満宮がある。
  • 文子天満宮（北野）によれば「西ノ京にあった『文子天満宮』は明治６年(1873)この地（北野）に移された」とある（�B→�C）。
  • したがってこれが現存する文子天満宮（北野）。
    
    
    • とすれば�A文子天満宮（左京七条）は（�B(905)の時点で）「舊址」になるはずだが、現在も�A「文子天満宮」を名乗っている。なんなのか。

• 他にもある文子天満宮（先頭へ）
  • 文子天満宮（岡崎）
    • 満願寺の境内に「文子天満宮」がある。
      • 因みに「満願寺」は天慶３年(940)「北野」に創立された真言宗の寺（現在は日蓮宗）。開祖は最珍（北野朝日寺）で北野天満宮の創始に関わった僧。
    • その関係で「最珍が自分の寺にも文子天満宮を創った」（と考えられる、時期不詳）。
    • 北野の満願寺は日蓮宗に改宗し、元禄１５年(1702)「文子天満宮」と共に岡崎に移転してきた。
    
    
  • 文子天満宮（神明神社）
    • 神明神社（綾小路通）の境内にも「文子天満宮」がある。
      • 経緯は不明だが（神社の駒札によれば）「豊園小学校内（現在の洛央小学校、左京五条四防二町）に祀られていた文子天満宮（菅原道真を祀る）の祭神が戦後（これは太平洋戦争）合祀されている」とあり、祭神の一人に「多治比文子」が加えられている。
      • もう少し、調べる必要がある。

満願寺境内の文子天満宮（岡崎）		神明神社境内の文子天満宮（綾小路）
「左京区岡崎法勝寺町」にある「静かな大きなお寺」です	令和２年(2020)の台風で「拝殿」が崩壊、撮影時は未修復だった	綾小路通の鳥居の脇に「文子天満宮」とはっきりある