(東京から引っ越してきた人の作った京都小事典)
夏至を過ぎたころ耳にする聞き慣れない言葉
(INDEX:索引へ)
夏至を過ぎた頃、普段聞き慣れない言葉をよく耳にする。ここではそれらを説明する。
夏越大祓
水無月
半夏生
麦代餅
夏安居
読みも難しいが
調べてみると、全国的に使われる言葉ではあるが、京都でよく耳にする。
京都には昔からの言葉がよく残っている証左
か。
夏越大祓(なごしのおおはらえ)
【広辞苑第六版】
記載なし
ただし
大祓(おおはらえ)
については次のような記載がある。
古来、6月と12月の晦日
(つごもり)
に、親王以下在京の百官を
朱雀門
前の広場に集めて、万民の罪や穢けがれを祓った神事。現在も宮中を初め全国各神社で行われる。
上記の「6月の晦日に行われる大祓」を
(特に)
夏越大祓
と呼ぶ
(ようである)
。
東京でも行われている。「12月の晦日に行われる大祓」は
年越大祓
と呼ぶ。
京都では
かなり大掛かりに行われる
。
茅の輪
(ちのわ)
平安時代の
夏越大祓
を偲ぶ
茅
(ちがや)
の輪をくぐることで、
半年の穢れを祓って
無病息災を祈願する
(写真は岡崎神社、くぐる人は多い)
上賀茂神社内を流れる
楢の小川
。百人一首に『風そよぐ
ならの小川
の 夕暮は
御祓ぞ夏の しるし
なりける』と詠われた
京都で行われる
夏越大祓
は次のようである
(上賀茂神社の例)
。
6月30日、10時から神職による
茅の輪くぐり
で始まる。
この後、一般参加者も「茅の輪くぐり」はできる。
その後、お祓いの行事が続き
20時には
ならの小川
で「人形
(ひとがた)
流し」が行われる。
勿論、一般の人も参加できる
(流せる)
。
(
先頭に戻る
)
水無月(みなづき)
【広辞苑第六版】
陰暦6月の異称
(「水の月」で、水を田に注ぎ入れる月の意)
とある。
水無月
三角形の外郎
(葛)
の上に小豆を乗せた菓子
京菓子司
柏屋光貞
(6/30にしか作らない)
でも京都で「
水無月
」と言えば、誰もが
夏越大祓に食べるお菓子
のことです。
6月30日は
水無月を食べる日
だと思っている。
和菓子屋もこの日を狙って、月末には
一斉に蒸し出す
。
中には本当に
6月30日しか作らない
店もある
(例:柏屋光貞)
。
なにしろ
人気の季節
(期日)
菓子
です。
分類的には
生菓子
(蒸し物)
になる。
(
先頭に戻る
)
半夏生(はんげしょう)
【広辞苑第六版】
@[礼記月令]七十二候の一つ。
夏至から11日目に当たる日
。太陽暦では7月1日頃。梅雨が明け田植の終期とされる
A〔植〕ドクダミ科の多年草。
片白草
(かたしろぐさ)
。水辺に生ずる。高さ約60センチメ-トル。夏、茎頂にある葉の下半部が白色に変じ、その葉腋に白色の穂状すいじょう花を綴る
とある。
半夏生
の花
どこでも見られる花だが
建仁寺
両足院の花は立派で、
特別公開
される
両足院の花は庭園の
池の周りいっぱい
に咲く
京都でも
辞書のとおり
理解されている。ただ
読みが難しくて
若い人には読めない人が多い
(全国的に)
。
【私説】
最近は「花ばかり有名」になっているが、本来は
季節を表す言葉
です。
「半夏」
(別名:烏柄杓(からすびしゃく))
が生ずる季節を「半夏生」(
はんげしょうず
)と呼ぶようになった
(七十二候)
という説もある。
植物学的に「半夏」と「半夏生」は異なる植物なのだそうです。
田植えから遠のいて
いるからでしょうが、こういう
季節感は大切に
していきたい。
(
先頭に戻る
)
麦代餅(むぎてもち)
【広辞苑第六版】
記載なし
麦代餅
必ず
きな粉
をまぶして食べます
中村軒の麦代餅は写真のような可愛い袋入り
田植え
(農繁期の作業)
の絵が描かれている
御菓子司「中村軒」
によれば
農繁期の終わった半夏生の頃
、その代金としてあらためて麦を頂戴しにあがったのです。麦代餅二個につき約五合の割、いわゆる物々交換の名残でございます。このように、麦と交換いたしましたので、「麦代餅」の名が生まれました
とある。
【私説】
「夏越大祓のとき水無月」を食べるように、「
半夏生のとき
麦代餅
」を食べる、という
季節菓子
(の感覚)
が好きです。
実際には「中村軒」でしか売っていないようです。かつ「期間限定」です。でも最近また人気が出てきたようです。
(
先頭に戻る
)
夏安居(げあんご)
【広辞苑第六版】
記載なし
ただし
安居(あんご)
については次のような記載がある。
僧が一定期間遊行
(ゆぎょう)
に出ないで、一カ所で修行すること。普通、陰暦4月16日に始まり7月15日に終わる
雨安居
(うあんご)
・夏安居
(げあんご)
・夏行
(げぎょう)
・夏籠
(げごもり)
・夏断
(げだち)
などという
禅宗では冬にも安居がある
とある。
夏安居
(修行)のイメージ
夏安居
(季節、背景=灰色の期間)
雨季なので「建物の中」で修行するしかないか
2020年の例
青丸は「夏越大祓」、赤丸は「半夏生」
【私説】
「陰暦4月16日に始まり7月15日」は
インドでは雨季
(夏)
にあたるため「遊行」に出難い。
したがってこの期間は「ある建物の中で修行するしかない」ことから、この行為のことを「安居」と呼んだ。
そしてその「建物
(寺院)
」のことを
安居院
と呼んだ。
奈良
(飛鳥)
には有名な
安居院(あんごいん)
(夏安居のための塔頭、「飛鳥寺」と呼ぶ方がわかりやすいか)
がある。
京都には
西法寺
(上京区大宮通寺之内上ル東入)
安居院(あぐい)
があるくらいか。
かつ「冬安居」もあることから、この期間の修行は「雨安居または夏安居」と呼んで区別した。
かつ日本では、この時期すべてが雨季ではないので、
「夏安居」と呼ぶ
ことが多くなった。
次第に
行為が転じて
この
期間を指すようにも
なった。
こうなると「半夏生が季節を表す言葉」であるように「
夏安居も季節
(4/16〜7/15)
を表す言葉
」と考えたくなる。
太陽暦では
「6/7〜9/2」
(2020年の場合)
で「半夏生はこの期間」となる。
(
先頭に戻る
)