東京から引っ越してきた人の作った京都小事典（銀閣寺道）

（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

銀閣寺道 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

市バスの中で修学旅行生が「『ぎんかくじどう』で降りようぜ」と声をかけているのを聞くと“ぞっと”する。
柔道、剣道ではあるまいに、銀閣寺道とはどんな武道なのか。
京都には「なんとか道」と付く駅（バス停）が多い。どういう場合にこういう名称にしたのだろうか。

市バスの停留所の【名前の付け方の原則】は次のようになっていると推察できる（以下、２０３番路線の例を示す）。
- 交差点、地域（町）にバス停を作るときの名前は「そのまま」とする。
  - 交差点の例）東山二条、東山仁王門、四条御前通、今出川浄福寺。
  - 地域（町）の例）東天王町、祇園、西ノ京円町、大将軍、北野白梅町、上七軒、百万遍、北白川、浄土寺。
    - 「百万遍」：これは地域の名前でもあるし、「東山今出川」（交差点）の通称でもある。
    - 「浄土寺」：これは地域の名前（寺はすでに無くなっている）。
- 施設、寺社仏閣近くにバス停を作るときの名前は「前」を付ける。
  - 例）錦林車庫前、真如堂前、岡崎神社前、四条京阪前、北野中学前、上京区総合庁舎前、同志社前、出町柳駅前、京大農学部前。
    - 「四条京阪前」は四条京阪「駅前」の略か（「四条京阪」という施設、交差点、地域（町）はない）。京阪駅前はすべて徹底して「なんとか京阪前」になっている。
- 寺社仏閣のほど近くにバス停を作るときの名前は「道」を付ける。
  - 例）壬生寺道、銀閣寺道。


「銀閣寺道」バス停（白川今出川） (NaviTime)では、銀閣寺まで625m。右折し「銀閣寺前」バス停の先へ。	「銀閣寺前」バス停 (NaviTime)では、銀閣寺まで415m。この先「お土産屋通り」を通って歩く。

「前」と「道」の違いは本当に距離なのか。

Ｈ１９年４月現在。
- 「前」の付く市バスの停留所は「１７１」箇所。
- 「道」の付く市バスの停留所は「　１９」箇所。

「前」と「道」があるのは、金閣寺と銀閣寺。
- 「金閣寺前」は確かに金閣寺の前にあって“徒歩約１分”、「金閣寺道」は「西大路通」にあり金閣寺には遠く“徒歩約３分”。
- 「銀閣寺前」は「鹿ヶ谷通」にあって“徒歩約６分”、「銀閣寺道」は「白川通」にあって“徒歩約９分”、距離的には確かに「銀閣寺道」の方が銀閣寺に遠い。
  - とはいえ「銀閣寺前」は銀閣寺前とは言い難い。結構長い銀閣寺前の「お土産屋通り」の手前であり
  - 「銀閣寺前」が「銀閣寺道」であって、「銀閣寺道」は「白川今出川」とする方がよさそう。

少し違った形で、「前」と「道」を持つのが、東寺。

各門の前に「東寺東門前」「東寺西門前」「東寺南門前」バス停があって、少し離れた「油小路」近くに「東寺道」バス停がある。
- 「東寺道」バス停は「東寺道」という通りに面していて、位置的にも「東寺へ至る道」という感じがする（写真に示す）。


「東寺南門前」バス停東寺（南門）のすぐ前にある。	「東寺道」バス停近鉄の先に「東寺東門」が見える。

例は３つしかないが、これらから推察すれば「「前」は近く、「道」は少し離れている」のは確かなようだ。

「前」も「道」も付かないバス停もある。

先に挙げた「浄土寺」、「野々宮」のように現在では「地域（町）」名になっているところもあり、一概に判断はできないが、明らかに「おかしなバス停」もある。
「大覚寺」
- 明らかに「大覚寺」の前にある。なぜ「大覚寺前」にしないのか。

「三宝寺」

まったく無名の「三宝寺」へ至る「周山街道」からの入口にバス停がある。
- バス停から「三宝寺」までは徒歩１０分はかかる。
- これまでの推察からすれば「三宝寺道」とすべき。
蛇足ながら（バスのアナウンスを聞いていると）「さんぽうじ」と「ぽう」にアクセントを置いて発音するらしい。


「大覚寺」バス停バス停の先に「大覚寺」の境内が見える程に近い。	「三宝寺」バス停なお高雄方面に進み、右の脇道に入る。 HPには“５分”とあるが、もっと遠い。

「東福寺」

「東福寺」バス停は「東福寺領」に近く東福寺のHPには“徒歩約４分”とあるが、観光目的の人は東福寺の「日下門」まで歩く必要があり“徒歩約１０分”かかり、バス停名を「東福寺」にするには難がある。
かたや「東福寺道」というバス停もあるが、ここから「日下門」までも“徒歩約１０分”である。
「金閣寺」のように「金閣寺前、金閣寺道」というセットになっていない。なぜ「東福寺前」としないのだろうか。


「東福寺」バス停東福寺領まではすぐだが観光入口（日下門）まで“約１０分”。	「東福寺道」バス停橋を渡って高架に沿って進む。観光入口（日下門）まで“ほぼ同じ”。

「城南宮」
- 「東福寺」と似ている。「城南宮道」に加えて、（「城南宮東口前」ではなく）「城南宮東口」がある。
「嵐山公園」「京阪中書島・伏見港公園」
- 施設近くのバス停は「なんとか前」とすることが多い。
- 「梅小路公園前」、「西京極運動公園前」など上記２つ以外の公園には「前」が付いている。この差はなにかよくわからない。
「前」も「道」も付かない「おかしなバス停」は、以上の６箇所のみである。

「前」に関する考察
- 「なんとか前」というバス停には課題が多い。
  - まず多過ぎる（１７１箇所）。
  - 「前」の付かない「おかしなバス停」も存在する。かつその違い（差）も明確でない。
  - 社内放送での英語では「前」を付けていない。
    - 「前」を付けなくても、外国人は理解できる、と考えているからであろう。
    - 当然、日本人も理解できる（と思う）。
- ということから、「前」の付くバス停の「前をすべて取り外す」方が、統一してわかりやすくなると思うのだが、いかがであろうか。
  - 混乱しない限り、短い名前の方がなにかと便利である。

「道」と名付けられたバス停の分析

単に「どこかに近い」という意味ではなさそうなバス停がいくつかある。分析してみよう。

実際の「通り名」としての「道」と名付けられたバス停

「太子道」（太子道はそれ自体が難しい、太子道を参照してください）
- 京都市が「太子道通」と呼んでいる道路があり（京都市の認識では御前通～天神川通）、西大路通との交差点名は「西大路太子道」になっていて、交差点近くにバス停「太子道」がある。
  - 「元々の太子道」は聖徳太子が建立した「広隆寺への参詣道」であり（西大路通～広隆寺）、京都市の言う「太子道通」とは微妙に位置が異なる。
- （京都市の言う）「太子道通」にはいくつかバス停があるのに、西大路太子道のバス停だけを「太子道」と呼ぶのはおかしい。これまでの論理からは「西大路太子道」とすべき。
「神宮道」
- 京都の街角写真制作時にお世話になった「森谷尅久、千宗室監修「京都の大路小路」（小学館）」によれば「神宮道」（冷泉通から仁王門通を経て円山公園北入口に至る南北道）という通りがあり、三条通との交差点「三条神宮道」近くにバス停「神宮道」がある。
  - 因みに、京都市は「神宮道」（冷泉通～二条通）を（京都市が管理する）「認定道路」から無くした（廃止した、平成２７年(2015)）。
  - いずれ「神宮道」の道路標識も外されるのか。
- 神宮道にはバス停はここ１個所のみなので「神宮道」としても誤解はされないが、これまでの論理からは「三条神宮道」とすべき。
- それとも単に“平安神宮にほど近い”バス停であるから「平安神宮道」とするところを略して、「神宮道」にしたか。
「修学院離宮道」
- 「道路標識」にも昭文社の地図「京都」にも「修学院離宮道」という道路があり、白川通との交差点「白川修学院離宮道」近くにバス停「修学院離宮道」がある。
- 修学院離宮道にはバスは走っていない。「修学院離宮道」への分岐（起点）だから「修学院離宮道」というバス停名にしたのか。これまでの論理からは「白川修学院離宮道」とすべき。
- それとも単に“修学院離宮にほど近い”バス停であるから「修学院離宮道」にしたか。
  - 因みに同じ場所にある京都バスのバス停は「松ヶ崎海尻町」と“古風”で馴染みやすい。


交差点「西大路太子道」バス停は西大路通にある。「西大路太子道」標識は２個所あって太子道の難しさがわかる。	交差点「三条神宮道」左写真のような「信号機標識」は無い。道路標識も「神宮道通」ではないので取り扱いが異なるのか。	交差点「白川修学院離宮」修学院離宮はこちらですよという「道路標識（修学院離宮道）」がある。

実際の「通り名」に似た形で「道」と名付けられたバス停

「岡崎道」
- 同じく「森谷尅久、千宗室監修「京都の大路小路」」によれば岡崎通（春日北通から三条通に至る南北道）という通りがあり、丸太町通との交差点「丸太町岡崎」近くにバス停「岡崎道」がある。
  - 「岡崎通」は京都市の（管理する）「認定道路」になっている。
  - これまでの論理からは「丸太町岡崎」、「太子道」の論理からは「岡崎」、「神宮道」の論理からは「岡崎通」となるだろう。
- 「岡崎」という寺社仏閣もないのに、どうして「岡崎道」にしたのか。
  - 「□□通」というバス停は他に無いので、「太子道」を真似て「岡崎道」にしたのか。どういう論理かわからない。
「清水道」
- 昭文社の地図「京都」には「清水坂」という道路があり、東大路通との交差点「東山清水坂」（信号機標識は清水道）近くにバス停「清水道」がある。
  - 因みに（京都市が管理する）「認定道路」には「清水坂道」があり、これは通称「五条坂」である。
  - そして、東大路通との交差点「東山清水坂道」近くにあるバス停は（通称を採用して）「五条坂」となっている。
- （五条坂と同様に）「清水坂」でよいのに、なぜ「清水道」にしたのか。
  - 「清水寺」に参詣する多くの観光客はバス停「五条坂」を使っているが、「清水坂」の方が（物理的には）やや近い。
  - 「清水寺」にほど近いバス停と考えるなら「清水寺道」になるはずである。
  - 単純に信号機標識の「清水道」を踏襲したか。


交差点「二条岡崎」「信号機標識」は無い。道路標識は「岡崎道」ではなく「岡崎通り」。	バス停「清水道」「清水道」は「バスの駅」と看板が出ている。「清水道」という道路はないですとということか。

以上の分析でもよくわからない「道」と名付けられたバス停
- 「修学院道」
  - 近くには「修学院離宮道」があり、こちらは“修学院離宮にほど近い（至る）”バス停である。
  - さらに「修学院駅前」もあり、こちらは“叡山電鉄叡山線の修学院駅”近くにあるバス停である。
  - 「修学院」はこの一帯の地域名なので、“修学院地域の中にある”バス停という意味でつけられたのか。でもこれなら「修学院」になるはず。
    - “修学院駅にほど近い（至る）”バス停と言う意味で「修学院駅道」とするところ、少し略して「修学院道」としたか。
この他にも（分析対象としなかったバス停は）１０箇所ある。
- 太秦映画村道、金閣寺道、苔寺道、城南宮道、泉涌寺道、竹田城南宮道、長福寺道、等持院道、南禅寺・永観堂道、壬生寺道。
いくらか怪しいバス停（竹田城南宮道、等持院道、東福寺道）もあるが概ねほど近い参詣道（アクセス道）になっている。
- 「至る道」ということで是非「みち」と読んで欲しい。

蛇足：その他の不思議な名前の「バス停」

学校近くのバス停（Ｈ１９年４月現在）

中学校は「△△中学前」となる。
- 北野中学前、嵯峨中学前など（７校）
- なぜか（統一して）中学校だけ取り扱いが違う。「校」が付かない。
小学校は「△△小学校前」となる。高校も大学も同様。
- 常盤野小学校前、嵯峨小学校前など（１０校）
- 洛北高校前、洛陽工業高校前など（８校）
- 佛教大学前、府立大学前、立命館大学前、龍谷大学前（４校）
  - 「大学」は「大学校」としたら、意味が変わってしまう。
  - 「大前」と略す大学もある。
    - 「京都外大前」「京都産大前」。
    - 少し変形の「上終町京都造形芸大前」「広沢池・佛大広沢校前」。
  - 「京都大学」は別格。「京大」と略す。「京都大学」とは言わない。
    - かつ広いので、「京大正門前」「京大農学部前」、そして遠くに「京大桂キャンパス前」。
  - 「同志社大学」は「同志社前」で特別扱い。
    - 善意に解釈すれば「同志社女子大学」「同志社女子高校」などもあるから。
京都らしい独特の「△△校前」というのもある。
- 乾隆校前、衣笠校前、北白川校前（３校）
- なぜこの３つだけなのか。共に古い歴史を持つことは確かだが、古い歴史を持つ学校は他にもあり、３つだけになっている理由はよくわからない。
  - 「乾隆校前」の「乾隆小学校」は明治２年からの学校名を引き継いでいるから、これは「よし」としよう。
  - 「北白川校前」の「北白川小学校」は明治７年(1874)開校（「白川校」）。北白川と改称したのは大正７年(1918)。
  - 「衣笠校前」は「衣笠小学校」は明治６年(1873)の「小北山校」に始まる。衣笠と改称したのは大正７年(1918)。
    - 「衣笠中学校」（これは遥か金閣寺の方にある）近くのバス停は「衣笠校前」とは言わない。「△△校前」は小学校専用のようである。


「乾隆小学校」バス停「乾隆校前」のある「千本通」からは一本東側に入ったところにある。	「北野中学校」バス停「北野中学前」の真ん前ににある。	「洛北高校」流石「元一中」。「洛北高校前」と「洛北高校正門前」のバス停がある。

「四条中新道」
- 「四条七本松」の交差点にあるのに「四条中新道」という名前になっている。
  - 「七本松」には、バス停「丸太町七本松」があり、交差点名にも「五条七本松」「七条七本松」がある（「五条中新道」とは言わない）。
  - 「四条以南」の「七本松通は細くなっている」からか、四条辺りは特別に「中新道」と呼ばれる。
「四条中新道」バス停
「四条七本松」にある“不思議な”バス停。