（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

後花園天皇 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 南北朝合一の頃の皇統の関係
  • 皇統図を簡略に記すと、次のような図になる。
  • 明徳３年(1392)室町幕府３代将軍足利義満のとき、北朝の北６後小松が100後小松になって、北朝に皇統が戻った（南北朝合一）。
    • このとき北朝は「北４後光厳統」が北朝内の皇統を繋いでいた。
      • 「北１光厳・北２光明・北３崇光」が南朝に拘禁されている間に、「拉致されなかった弥仁」が観応３年(1352)室町幕府の強権で践祚した（北４後光厳）。
      • 北４後光厳は譲位にあたって（応安４年(1371)）幕府に働きかけて、自らの皇子（緒仁）を北５後円融として践祚した。
      • さらに北５後円融も譲位にあたって（永徳２年(1382)）北３崇光統に戻らないよう幕府（足利義満）に働きかけて自らの皇子（幹仁）を北６後小松として践祚した。
    • 北４後光厳の幕府工作により、「北３崇光統」は伏見宮家という「世襲親王家」に甘んじさせられていた。
      • 因みに「栄仁親王から始まる伏見宮家」は史上最長の宮家で、昭和まで続いた。
  
  

  持明院統（北朝）は赤枠 伏見宮家は青枠 南北朝の合一（100後小松）以降は黒枠で表示する 天皇名の前は「代数」（北朝は北朝内連番） 「天皇・上皇」は省略する 天皇名の下は「在位西暦」

• 後小松天皇の皇子たち
  • 一休宗純
    • 最初に生まれた「庶子」である可能性が高い。応永元年(1394)生まれか（実は生年もはっきりしない）。「後小松天皇の落胤」との説は確かそう。
    • 母についてもいろいろ説があるが、司馬遼太郎によれば「南朝方の公卿花山院某の娘」。
    • ６歳で寺に出され（京都四条の安国寺とも）、１７歳のとき戒名「宗純」を受けた。後小松の「跡を継ぐ」ことは端からできる状況ではなかった。文明１３年(1481)８７歳で没。
    
    

    一休が開祖になった「真珠庵」	一休が亡くなった「酬恩庵」
    文明６年(1474)103後土御門の勅命で大徳寺の住持になり、真珠庵の開祖に	康正２年(1456)道場を建て、ここで没。ここにある墓は宮内庁が管理している

  • 101称光
    • 100後小松の第一皇子。「100後小松と義持の協力」で応永１９年(1412)南朝に戻さず北朝が続けて即位する（１２歳）が病弱で子もできず、正長元年(1428)２８歳で崩御した。
      • 101称光の即位は「南北朝合一の和睦条件」を反故にするものであった。
  • 小川宮
    • 100後小松の第二皇子。101称光の３歳年下の弟で、兄弟の仲は悪かった。かつ奇行が多く、一時御所外で過ごしていた。そして応永３２年(1425)２２歳で急逝した。
    
    
  • ということで正長元年(1428)100後小松上皇には「直系の跡継ぎ」がいなくなった。すなわち「北４後光厳統」は絶える状況となった。

括弧内の数字は 「生年−没年（西暦）」

• 後花園天皇の生涯
  • 応永２６年(1419)北３崇光統伏見宮家「貞成王」（応永３２年(1425)貞成親王になった）の長男（彦仁）として生まれる（応永２５年(1418)生まれ、次男との説もある）。
    • 母は「庭田幸子」（後に敷政門院）。
    • 貞成王は応安５年(1372)（南北朝合一前）生まれとされるから、４８歳の時（南北朝合一後）の子供ということになる。
      • 「崇光統」には「95花園・北１光厳の誡太子書」など「天皇家代々の記録類」が引き継がれていて、父・貞成王から「天皇の資質」などの薫陶を受けた。
    • 応永３３年(1426)８歳の頃か「義円（後の義教）との間には逸話」がある。
      • 義円が青蓮院門跡だった頃（応永１９年(1412)〜応永３４年(1427)）「凝っていた猿楽」を青蓮院で行う際に、「（琵琶、謡、連歌などを家芸にしていた）伏見宮家にある樹木」を所望した。
      • そのとき伏見宮家で対応したのが「彦仁」で即座に承諾したらしい。これで「義円は彦仁を気に入った」という逸話が残る。
      • その義円が応永３５年(1428)１月の「くじ引き」で６代将軍に内定した。
    
    

    椿葉記	看聞日記
    貞成王が「崇光統の正統性」について著した記録。永享５年(1433)頃完成。写真は「宮内庁図書寮」保管の自筆巻	貞成王の日記（応永２３年(1416)〜文安５年(1448)）。写真は日記をベースに横田清が著した書籍

    
    
  • 正長元年(1428)７月100後小松は「次期将軍足利義宣（後の義教）の意向もあり」北３崇光統伏見宮家「彦仁」（１０歳）を100後小松の猶子として践祚した。これが「102後花園」。
    • 「３代義満に可愛がられた100後小松」と「（義満にすべて反対していた）４代義持」は他人行儀の仲であり、『６代義教は彦仁を気に入っていた』こと（逸話）と関係があるかもしれない。
    • 当然100後小松は院政を敷いたが永享５年(1433)崩御し、ここから「102後花園の親政」（１５歳）が始まった。
    
    
  • 親政に入った102後花園と６代将軍義教とは協力関係を作った。
    • 協力しなければならなかった背景は
      • 義教は「くじ引き」で急遽応永３５年(1428)１月将軍に就任したばかりで、地盤は強固ではなく、地方にも幕府に反対する勢力も多かった。
      • 102後花園も「100後小松の末裔断絶」で急遽正長元年(1428)７月天皇に即位し「南朝の残党」も残っており、幕府の武力に頼りたかった。
    • 義教は「幕府を強い立場にする」ために「朝廷（天皇）」を使おうと考えた。
      • 表面的には「義教は天皇の臣下として振舞い」、天皇を上位者として扱った。
      • そして実務的には「自分に都合の良い治罰綸旨を発給」してもらうことにした。
    • 102後花園は「幕府の戦いに関する治罰綸旨をたびたび発給」し、102後花園は戦う天皇と揶揄された。
      • 「治罰綸旨」は本来「朝廷に歯向かう者」に対して発給し、発給された者は「朝敵」となる。102後花園の治罰綸旨で「朝敵となる者の戦いは難しくなり、幕府が有利な戦いに持ち込める」という効果を狙った。
      • 最初は「永享１０年(1438)の永享の乱（鎌倉公方・足利持氏と関東管領・上杉憲実が争った）」。憲実の救援依頼に対して、義教は102後花園に頼って「持氏追討の綸旨」を発給してもらった。
        • 持氏は天皇に歯向かった訳でもないのに「朝敵」とされた（結果、持氏は敗れた）。102後花園は「乱は早く治めたい」と考えたのかも。
      • 「嘉吉元年(1441)の嘉吉の乱（将軍義教が播磨守護・赤松満祐に暗殺された）」でも、管領・細川持之の奏請を受け「赤松征伐の綸旨」を発給してもらった。
        • これは「足利家と赤松家の私闘」であり、治罰綸旨など発給できるべくも無かったが、102後花園は奏請された綸旨を「天下を静謐にするため」と自ら書き直して発給した。
    
    

    後花園天皇御遺蹟（正長元年(1428)）	応仁の乱勃発の地（文正２年(1467)）	後花園天皇の火葬塚（文明２年(1470)）
    足利義教は「102後花園の践祚」を邪魔されないよう、彦仁を熊野若王子神社に入れて警固した。写真はその遺蹟の碑	「治罰院宣の対象となった畠山政長」が陣を敷いた御霊神社に碑が残る	塚は「悲田院（現在の大応寺）」のすぐ脇。大応寺には102後花園の念持仏（観世音菩薩像）を祀ってある

    
    
  • 義政が８代将軍になってからも政治的な活動（義政の無駄遣いを諫めるなど）を続けたが、長男（後の103後土御門）も成人したことで寛正５年(1464)譲位して院政に入った（４５歳）。
    • 「応仁の乱」でも治罰院宣を発給した。
      • 文正元年(1466)１２月「畠山家の内訌」に首を突っ込み「畠山政長（後の東軍）治罰院宣」を発給。これが応仁の乱「文正２年(1467)１月勃発の引き金」になったという説もある。これに反省・出家して「後花園法皇」になったとも。
      • さらに応仁元年(1467)１０月には「山名宗全（西軍）治罰院宣」を発給している。どちらが勝つともわからない乱に対して「102後花園もわからないまま」乱を収めるために（右往左往しながら）院宣を発給したのではないか。
        • 山名宗全が後南朝の末裔を天皇に担ぎだそうとする動きがあり、これを封じるためとも。
    • 天皇在位は３５年１１ヶ月で最長（歴史以前および昭和天皇以降を除いて）となった。
    • 102後花園以降は「大きな皇統争い」も無く現在の天皇に至っている。
    
    
  • 文明２年(1470)102後花園は「花の御所」（現在の室町通今出川上ル、義政と同居していた）で崩御した（５２歳）。
    • 悲田院（現在の堀川通紫明下ル、花の御所に近かったからか）で火葬され、遺詔により「山国陵」に埋葬された。
      
      
    • （室町時代では最も）波乱に富んだ生涯を送った天皇だった。常に皇統の一統のことを考えていたようです。

• 後花園の後の皇統
  • 「後花園の後の皇統」についてはいろいろな見方がある。
    1. 102後花園は「100後小松の猶子」であり、100後小松崩御に際して「諒闇（りょうあん、最もしっかりした葬儀）」を行っていることから「北４後光厳統」を継承した、とする見方。
    2. 102後花園は「北３崇光の直系の曾孫」であり、文安４年(1447)に「実の父親・貞成親王に太上天皇の尊号（後崇光院）」を贈ったことから「北３崇光統」を継承した、とする見方。
    
    
  • 【私説】（102後花園の本当の心の中はわからないけれど）
    • 「北１光厳陵の傍に埋めるよう」遺詔したことから、北朝両統を一本化して「北朝光厳」を継承しようとした、のではないか。
      • 100後小松を諒闇したのも、貞成親王を後崇光院にしたのも、一本化するための方策だったのではないか。
      • この結果
        1. 天皇は「万世一系」を称えることができるようになり
        2. 「伏見宮家」も現在まで継続することができた。
      • 「後花園」と追号されたのも、北１光厳が95花園から天皇としての資質を受け継いだことが大きな要素になったと考えられる。

北１光厳と102後花園の山国陵

遺詔どおり「光厳天皇と並んで」埋葬されたが、現在は間違った歴史観で「山国陵と後山国陵」に分けられてしまっている