（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

征夷大将軍 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 征夷大将軍とは
  • 令外官の一つ。
    • 令外官とは「律令時代の『令』に規定されたほかに新たに設けられた官職」。
    • 時代が進むにつれて、必要になってきた官職と言える。
    • 他にも、関白、蔵人（頭）、勘解由使、検非違使などがある。

• 当初の征夷大将軍
  • 大伴弟麻呂
    • 延暦１３年(794)蝦夷征伐のため「征夷大将軍として節刀」を賜与された、と史料にあるから最初の征夷大将軍である。
      • 征夷大将軍とは蝦夷を征伐するために、本来天皇が保有する軍隊の指揮権を一時的に与えられた人を意味した。
      • 「節刀」は「任命の印」であり、これに歯向かう者は朝敵とされた。
      • 役目を終えて「節刀」を返上した時点で、征夷大将軍の任が解かれた。
  • 坂上田村麻呂
    • 教科書でよく知られている坂上田村麻呂は延暦１６年(797)蝦夷征服のため征夷大将軍に任じられた。
      • この時は、単に叛乱を鎮めるだけでなく、「蝦夷の国を治める」ことも役割に加えられた。
        • 処罰権、行政権などの統治に必要な権限も与えられたであろう。
      • 結果として征夷大将軍とは蝦夷を征服するために、本来天皇が保有する「軍隊の指揮権」・「地域の統治権」を一時的に与えられた人を意味するようになった。
        • 延暦２０年(801)蝦夷地を平定したと言われている。しかしその後も蝦夷安定のために、蝦夷へは何度も出征している。

将軍塚（青蓮院門跡将軍塚大日堂）	坂上田村麻呂の墓
平安京へ遷都の折、王城鎮護のため坂上田村麻呂の像を埋めたと謂われている	坂上田村麻呂は弘仁２年(811)没した。場所は山科区勧修寺東栗栖野町の「田村の森の公園」

• それに続く征夷大将軍
  • 文室綿麻呂
    • 陸奥出羽按察使だった文室綿麻呂が弘仁２年(811)蝦夷の叛乱を鎮めるために「征夷将軍」に任じられた。
      • このとき「節刀」の賜与はなかったので、厳密には征夷大将軍ではない。
      • それでも征夷大将軍に数えられているのは、蝦夷征伐最後の将軍になったためか。
  • 藤原忠文
    • 天慶２年(939)平将門の乱鎮圧のため征東大将軍に任じられた（蝦夷ではないから）。
      • 「節刀」の賜与はあったので、大将軍。
    • 次に天慶３年(940)藤原純友の乱鎮圧のため初の征西将軍に任じられた。
      • 「節刀賜与」は不明。
    • 「征東」「征西」２つの将軍職を果たしたので、征夷大将軍に数えられたか。
  • 木曽義仲（源義仲）
    • 後白河法皇は寿永３年(1184)１月１０日頼朝牽制ために義仲を「征東大将軍」に任じた。
      • 一方、後白河法皇は同年１月１７日頼朝に「義仲追討の院宣」を出し、義仲は同年１月２１日近江粟津で戦死した。
      • 征東大将軍在位も短く、征夷大将軍に数えるのはおかしい。
  
  

  平将門の霊を供養する「京都神田明神」	木曽義仲の首塚
  将門の首が、膏薬辻子まで飛んできたと伝えれれ、ここに「京都神田明神」が造られた	義仲は戦死後、六条河原に晒され「法観寺（八坂の塔）」に葬られた。墓は義仲寺（大津）にある

• 鎌倉幕府の長としての征夷大将軍（９人）
  • 源頼朝
    • 余程優秀な参謀を抱えていたのか、平家滅亡の元暦２年(1185)にはすぐさま守護・地頭の制を実施し、天皇貴族国家から武家国家という新国家創造（歴史の大転換）をやってのけた。
      • 頼朝は建久元年(1190)に上洛。後白河法皇に謁見し、守護・地頭の制（日本国総追捕使・総地頭の設置）を認めさせた（これで全国の軍事警察権・国衙領も含めた兵粮米（税金）取り立て権を手中に収めた）。
      • 「征夷大将軍に任じてくれなかった後白河法皇」崩御後の建久３年(1192)後鳥羽天皇から（対面無しで）征夷大将軍に任じられた（これで幕府を正当化した）。
      • ここでも巧みにすり替えて（蝦夷を拡大し）征夷大将軍とは本来天皇が保有する「軍事警察権」・「日本全国の統治権」を恒久的に与えられた人を意味するようにした。
        • 建久元年(1190)の上洛時には、左女牛八幡宮・石清水八幡宮を参拝し源氏の長者であることを天下に示した。
        • 併せて、清水寺（征夷大将軍「坂上田村麻呂」に敬意を表したか）・鞍馬寺（戦勝の神「毘沙門天像」を賜り鎌倉へ持ち帰る）を参拝している。
        • やること為すことがすべて計算され尽くしている。
    
    

    伝源頼朝像	（河内源氏第二代棟梁源頼義創建の）左女牛八幡宮
    神護寺所蔵（現在は京都国立博物館に寄託中、写真はPublicDomainから）	源頼朝が参拝したときは「左女牛」にあった（現在は清水坂に移転して、若宮八幡宮と呼ばれている）

    
    
  • 源頼家、実朝
    • 頼家は、頼朝の死（建久１０年(1199)（１月））後すぐに「鎌倉幕府」を継承、征夷大将軍就任は３年後の建仁２年(1202)。
    • 実朝は、頼家が危篤になったので建仁３年(1203)「鎌倉幕府」を継承すると同時に征夷大将軍に就任した。
      • ２人とも京都には上っていない。就任は書面で伝えられた。
  • 藤原頼経、頼嗣（親子）
    • 源氏の血が絶えたので、多少の血繋がりで、九条家から招聘された。
    • 頼経は、３歳で鎌倉へ向かい、承久の乱が終焉した後嘉禄２年(1226)９歳で第４代征夷大将軍に就任。その後幕府の内紛に巻き込まれ、４代執権北条経時に退任させられた。
    • 頼嗣は、父の退任後寛元２年(1244)６歳で征夷大将軍に就任した。鎌倉幕府と天皇との力関係が変化してきたことで、天皇側が親王将軍を認めるようになり、藤原将軍は追放された。
  • 宗尊親王、惟康親王（親子）、久明親王、守邦親王（親子）
    • 宗尊親王（後嵯峨天皇の第一皇子）は、頼嗣追放を受けて建長４年(1252)１１歳で「最初の親王将軍」となった。
    • 惟康親王は、宗尊親王の子で文永３年(1266)父宗尊親王が（次期執権時宗より年上だとの理由で）京に戻されたため３歳で征夷大将軍に就任した。
    • 久明親王（後深草天皇の第六皇子）は、正応２年(1289)惟康親王が京に戻された（原因不明）ため、新たに京から呼ばれて１４歳で征夷大将軍に就任した。
      • ３人とも（お飾りだからでしょうが）「壮年」になる前に退任させられている。結果、退任後は京都で過ごすことができた。
    • 守邦親王は、久明親王の子で徳治３年(1308)（８月）父久明親王が京に戻された（原因不明）ため８歳で征夷大将軍に就任した。
      • 鎌倉幕府滅亡直後出家し、その３ヶ月後に（京都を見ることなく）死亡した。最後の鎌倉幕府征夷大将軍である。

• 南北朝時代の征夷大将軍
  • 護良親王（延慶元年(1308)生〜建武２年(1335)没）
    • 元弘３年(1333)後醍醐天皇は「就任を熱望している足利尊氏に渡さない」ため三男（母は不明）の護良親王を征夷大将軍に任じた（建武の新政、２６歳）。
      • 足利尊氏は後醍醐天皇の寵妃（後継天皇のことで護良親王の失脚を望む）「阿野廉子（やすこ）」に工作して、数ヶ月後に解任させた。
      • 建武２年(1335)（中先代の乱の戦乱に紛れて）鎌倉の牢で足利直義に殺害された（２８歳）。
  • 成良親王（嘉暦元年(1326)生〜興国５年(1344)没）
    • 後醍醐天皇の六男（母は阿野廉子）である成良親王は、後醍醐天皇の「駒」のように使われた。建武元年(1334)「鎌倉府将軍」（９歳）として鎌倉へ。建武２年(1335)（中先代の乱になると）京に逃げ帰り、再度「就任を熱望している足利尊氏に渡さない」ため１０歳で征夷大将軍に就任させられた。
      • 延元元年(1336)改元時に、退任となった（１１歳）。その後の動向は不明だが、（北朝に捕らえられて京都で）興国５年(1344)没した（１９歳）とも伝わる。墓所も不明。
  • 宗良親王（南朝、応長元年(1311)生〜元中２年(1385)没）
    • （南朝）後村上天皇（後醍醐天皇の七男、母は阿野廉子）は正平７年(1352)後醍醐天皇の四男（母は二条為世の娘・為子）である異母兄の宗良親王を「征夷大将軍」に任じた（４２歳）。
    • 北朝では暦応元年(1338)足利尊氏を「征夷大将軍」に任じているから征夷大将軍も両朝並立となった。
      • 鎌倉（正平の一統）、越後、信濃などで北朝と戦うが、戦い利あらずで文中３年(1374)吉野に戻って（自主的に）退任したか（６４歳）。（天授３年(1377)信濃に戻って）７５歳まで生きた。
      • 元来「歌人」であり、母為子を偲んで「散りはてし ははその杜の 名残とも しらるばかりの ことの葉もがな」と（多分信濃で）詠んでいる。
  
  

  護良親王の「居住の地」	護良親王の「戦いの地」
  法勝寺（写真）九重塔（大塔）周辺に居住していたことから大塔宮と呼ばれた	後醍醐天皇が笠置山（写真）に立て籠もったことを聞いて、比叡山から還俗して「戦い」に参加した

• 室町幕府の長としての征夷大将軍（１５人）
  • 足利尊氏
    • 幕府を開くべく征夷大将軍就任を熱望したが、後醍醐天皇に散々邪魔され続けた（上述）。
      • 源頼朝に倣って征夷大将軍に就任すれば本来天皇が保有する「軍事警察権」・「日本全国の統治権」が得られると考えていたようだ。
    • 建武３年(1336)九州から上洛し建武軍を破り「後醍醐天皇から光明天皇」を践祚させた。後醍醐天皇は吉野に走り（南北朝に分裂）、新田義貞も戦死したことを受けて、漸く光明天皇は暦応元年(1338)尊氏を征夷大将軍に任じた（名実ともに室町幕府開府）。
      • しかし尊氏存命中（延文３年(1358)没）は観応の擾乱(1350-1352)などの戦乱が続き幕府は不安定だった。
    
    

    室町幕府発祥の地	足利将軍「室町第」
    足利尊氏の邸宅、ここで征夷大将軍に就任し、ここで没した	永和４年(1378)に義満が造営を始めたいわゆる「花の御所」、義教・義政もここで執務した

    
    
  • 足利義詮、義満
    • 義詮は、父尊氏の死後延文３年(1358)すぐに征夷大将軍に就任。南北朝合一を見ることなく死去した。
    • 義満は、父義詮の死後すぐに「室町幕府」を継承し、翌年の応安元年(1368)１１歳で征夷大将軍に就任。明徳３年(1392)「南北朝合一」を果たし室町幕府の安定期を迎えた。
  • 足利義持、義量、義教、義勝、義政
    • 義持は、父義満（存命中）から応永元年(1394)（１２月）征夷大将軍職を９歳で譲り受けた（義満の将軍院政化）。応永１５年(1408)義満死去により実質的な将軍に。将軍在職は２８年と室町幕府最長。
    • 義量も、父義持（存命中）から応永３０年(1423)征夷大将軍職を１７歳で譲り受けたが、在職２年で病没（応永３２年(1425)）。
    • 義教は、義量が後継者を決めずに没したので（４年間の空白を経て）くじ引きで正長２年(1429)（３月）３６歳で征夷大将軍職に就任した。恐怖政治を行ったため嘉吉元年(1441)赤松満祐に殺された（嘉吉の乱）。
    • 義勝は、父義教が殺害されたので嘉吉２年(1442)９歳で征夷大将軍職に就任したが、在職８ヶ月赤痢で病没した（嘉吉３年(1443)）。
    • 義政も、兄義勝夭折時は８歳だったため（６年間の空白を経て）文安６年(1449)（４月）１４歳になってから征夷大将軍職に就任した。早期引退を希望し、寛正５年(1464)弟義尋（還俗して義視）を後継者にしたが・・・これが応仁の乱の引き金になった。義政の墓は相国寺にある。
      • 義持の後は、病没・殺害・政務不熱心と散々な将軍が「花の御所」（平安京外）で執務した。
    
    

    室町幕府の位置	室町幕府「小川殿」（寺之内通堀川東入ル）	足利義昭の「二条城」（室町通下立売上ル）
    赤線＝平安京（北辺・東辺） 「殿」＝小川殿（百々御所）	「花の御所」焼失以降は（文明８年(1476)）、幕府はこの地へ移った（百々橋に近い）	織田信長が将軍足利義昭のために築城した城（永禄１２年(1569)）。「旧二条城」と呼ばれる

    
    
  • 足利義尚、義材、義澄、義稙、義晴、義輝、義栄、義昭
    • 義尚は、応仁の乱が下火になった頃父義政が漸く引退し文明５年(1473)９歳で征夷大将軍職を引き継いだ。義政とは違って戦場に赴くこともあり、六角高頼征伐の陣中で病没した（長享２年(1488)、義政は延徳２年(1490)没）。
      • 文明８年(1476)「花の御所」が焼失してからは「小川殿（百々御所、現宝鏡寺あたり）」へ移った。
    • 義材は、義尚・義政が相次いで没したので巡り巡って（父義視を飛ばして）延徳２年(1490)２５歳で征夷大将軍に就任した。細川政元に疎まれ、龍安寺に幽閉された（明応２年(1493)）。その後越中に逃れるが・・・
      • 義尚以降は、もはや足利家では後継将軍を決めれなくなり、統治権も発揮できない状況に陥り、京から離れる期間も増えた。
    • 義澄（義教の孫、還俗名：義遐、就任時：義高）は、細川政元の擁立で明応３年(1494)１６歳で征夷大将軍に就任した。
      • 将軍とは名ばかりで、実際には管領家の傀儡であった。義材に京から追い出された後は、近江に逃れた。
    • 義稙（義材と同一人物、就任時：義尹、義稙と改名）は北陸・西国で力を蓄え、大内義興の力を借り武力で義澄を京から追い出し永正５年(1508)再度４３歳で征夷大将軍に就任した。その後細川高国が政治を牛耳るようになり、義稙は阿波に出奔し解任された。
      • 征夷大将軍に２度就任したのは、歴史上この足利義材（義稙）だけ。
    • 義晴（義澄の子）は、義稙が解任された後、細川高国の要請で大永元年(1521)１１歳で征夷大将軍に就任した。その後、細川家の内紛、三好勢（長慶）の攻勢などで、京都周辺を流浪した。
      • 流浪続きで、将軍らしい仕事は何もできなかった。義晴が近江で亡くなったのは天文１９年(1550)。
    • 義輝（義晴の子）は、近江に逃亡中の父義晴から天文１５年(1546)１１歳で征夷大将軍を譲り受けた。剣術を学び、大名間の抗争にも介入したが、永禄８年(1565)松永久秀に攻め殺された。
      • 義晴同様、京都周辺での流浪が続いた。摂津に拠点を構える三好長慶と永禄元年(1558)（１１月）和睦してからは漸く京に落ち着けた。
    • 義栄（義澄の孫）は、義輝殺害で将軍職が不在（３年間）になったため、父義冬と阿波に逃れていたところ三好三人衆の後押しで永禄１１年(1568)２月３１歳摂津で征夷大将軍に就任した。
      • 織田信長が三好三人衆を討ち破ったため、阿波に逃れたが、永禄１１年(1568)９月一度も京に入ること無く腫れ物で病死した。
    • 義昭（義晴の子）は、織田信長の援助で越前から京に出て永禄１１年(1568)１０月３２歳で征夷大将軍に就任した。
      • その後は「反信長」行動に終始したが、元亀４年(1573)信長に敗れ（征夷大将軍在職のまま）京を追放され室町幕府は滅んだ。
      • 天正１６年(1588)（幕府滅亡から１５年経って漸く）関白秀吉に従って参内し征夷大将軍を返上した。義昭は慶長２年(1597)まで生きた。

• 江戸幕府の長としての征夷大将軍（１５人）
  • 徳川家康
    • 戦国時代を勝ち抜いた家康は、源頼朝に倣って征夷大将軍を要望し、慶長８年(1603)後陽成天皇から６１歳伏見城で征夷大将軍宣下を受けた。同時に源氏長者の宣下も受けた。
      • 天皇側も、長い政権離れで、政権を担当する力はないと悟っていたのだろう、簡単に「宣下」を認めた。
    • 元和元年(1615)「大阪夏の陣」で豊臣氏を滅ぼし、武家諸法度・禁中並公家諸法度を定め、着実に江戸幕府の安定化を図った。
    
    

    二条城
    慶長１１年(1606)完成（家康）、寛永３年(1626)後水尾天皇の行幸（写真は東大手門）	慶応３年(1867)二の丸御殿大広間にて大政奉還の意見を求めた（写真は二の丸御殿入口）

    
    
  • 徳川秀忠、家光
    • 秀忠は、在職２年の父家康から慶長１０年(1605)征夷大将軍職を２７歳で譲り受けた（家康の将軍院政化、大御所制度）。大阪夏の陣は「将軍」として参陣した。
      • 秀忠は家光に将軍職を譲る許可を得るため、元和９年(1623)上洛・参内している。さらに家光と共に後水尾天皇の二条城行幸を迎えるため、寛永３年(1626)上洛している。
    • 家光は、父秀忠（存命中）から元和９年(1623)２０歳伏見城で征夷大将軍職を譲り受けた（秀忠も大御所に）。
      • 家光は（秀忠と共に）元和９年(1623)・寛永３年(1626)上洛し、その後紫衣事件の関係修復のため寛永１１年(1634)３度目の上洛を果たしている。
    
    
  • 徳川家綱、綱吉、家宣、家継
    • 家綱は、父家光の薨去に伴い慶安４年(1651)江戸城１０歳で征夷大将軍に就任。自分の意志はあまり見せず「そうせい将軍」と陰口された。
      • 以降、将軍は江戸城で将軍宣下を受ける、政権は老中たちの合議制になる。
    • 綱吉は、兄家綱（子無し）の薨去に伴い館林藩主から延宝８年(1680)３５歳で征夷大将軍に迎えられた。「犬公方」で悪名を馳せる。
      • 綱吉就任にあたっては、鎌倉幕府に倣って親王将軍も検討された。実現されれば、歴史は変わっていたかもしれない。
    • 家宣（家光の孫）は、綱吉（生存する子無し）の薨去に伴い甲府藩主から宝永６年(1709)４８歳で征夷大将軍に迎えられた。在職３年で薨去した。
    • 家継は、父家宣の薨去に伴い（生存する唯一の子として）正徳２年(1712)４歳で征夷大将軍に就任。風邪で８歳で薨去した。
      • これで「家光の血筋」は絶えた。大奥を始めた（家光）割には、家系には子宝に恵まれなかった。
  • 徳川吉宗、家重、家治、家斉、家慶、家定、家茂
    • 吉宗は、幼少家継の薨去に伴い血筋の遠い紀州藩主から享保元年(1716)（７月）３３歳で征夷大将軍に就任。就任の経緯から「尾張藩との確執」は尾を引いた。
    • 家重は、父吉宗から延享２年(1745)３５歳で征夷大将軍を譲り受けた（吉宗が大御所に）。吉宗の子の割には「虚弱体質、言語不明瞭」で政治にはタッチしなかった。
    • 家治は、父家重重篤に伴い宝暦１０年(1760)２４歳で征夷大将軍を譲り受けた（家重は翌年病没）。政治は「田沼意次」に任せた（結果オーライ）。
      • 家治には男児が２人いたが、一人は早世、もう一人は１８歳で亡くなる。そこで血筋の少し遠い一橋家から養子（家斉）を貰い受けた。
    • 家斉は、養父家治の薨去に伴い天明７年(1787)１５歳で征夷大将軍に就任。５５人の子をもうけ、在職も５０年と最長在職を記録した。
    • 家慶は、在職５０年の父家斉から天保８年(1837)４５歳で征夷大将軍を譲り受けた（家斉は５年ほど大御所に）。政治は「水野忠邦」に任せた（庶民に不人気）、「黒船来航」に騒然。
      • 家慶には男児が１４人いたが、無事成人したのは一人（家定）だけ。その家定も病弱・精神不安定（癇癪もち）で、一橋慶喜を養子（１３代将軍候補）にと考えた時期もあった。
    • 家定は、父家慶の薨去に伴い嘉永６年(1853)３０歳で征夷大将軍に就任。外国船来航の中「癇癪将軍」と揶揄され、実子も無く後継問題（家茂か慶喜か）も大いに紛糾した。
      • 家綱から家定までの将軍は京都には上っていない。
    • 家茂（家斉の孫）は、家定薨去の後、後継紛糾の中「血筋の近さ」故、紀州藩主から安政５年(1858)１３歳で征夷大将軍に選ばれた。出陣先の大阪城で病没した。
      • 文久２年(1862)「公武合体」で「皇女和宮」（孝明天皇の妹）を夫人に（お陰で側室も無し）向かえた家茂も実子が無く「吉宗の血筋」は絶えた。
      • 将軍としては２２９年ぶりに文久３年(1863)３月「孝明天皇拝謁のため」上洛した（孝明天皇は攘夷を促したかった）。文久４年(1864)１月には「勝海舟船長の翔鶴丸」に乗って海路で、慶応元年(1865)閏５月には第２次長州征伐のため３度目の上洛。この後、大阪城へ移動。
  • 徳川慶喜
    • 慶喜は、「斜に構える」性格が災いして、１３代にも１４代将軍にもなり損ね、安政の大獄事件で「隠居謹慎蟄居処分」を受けたりしたが、１４代将軍病没に伴い漸く慶応２年(1866)３０歳で（結果として）最後の征夷大将軍に就任した。
      • 文久２年(1862)７月「将軍後見職」になり、文久３年(1863)１月に１４代将軍の名代として上洛して、攘夷実行に関して朝廷と交渉したことがある。
    • 就任後も倒幕運動が盛んになり、慶応３年(1867)二条城にて大政奉還の意見を求め（参加大名は無発言）、翌日奏請・翌々日勅可され江戸幕府は終焉を迎えた。
      • 慶応４年(1868)には鳥羽伏見の戦い敗北を知って、大阪城から軍艦で逃げだりして評判を落とした。
      • 明治４３年(1910)家督を譲り、大正２年(1913)感冒で病死した。

• （番外）征夷大将軍になれなかった人
  • 羽柴秀吉
    • 任官の略歴
      • 天正１１年(1583)頃の「公卿補任」には「従四位下参議 平秀吉」とある。
        • 織田信長を崇拝していたから、信長に倣って「平」と称した（のでしょう）。
          • 織田信長は「右大臣」だったから、それより「上を狙っていた」節があります。
          • 織田信長は右大臣辞任後「三職推任」（太政大臣、関白、征夷大将軍のいずれになるか）を打診されたが、回答前に「本能寺の変」で亡くなってしまった。
      • 天正１３年(1585)（秀吉には「三職推任」は無かったのだろう）打診された関白（藤原秀吉）を受任した。
        • この際、前関白近衛前久の猶子となり、氏を平から藤原に改めた。
      • 天正１４年(1586)太政大臣（豊臣秀吉）に任官した。
        • このとき「源平藤橘」に並ぶ「第五の氏 豊臣」を創始した。
        • この頃、焼け野原状態の京都を整備し直した。
        • 天正１８年(1590)秀次が関白に就任したので、秀吉は「太閤豊臣秀吉」と呼ばれるようになった。
    • なぜ秀吉は「征夷大将軍」にならなかったのか。
      • いろいろな説がある。
        • 「源氏」でなかったから、まだ（天正１６年(1588)時点では）足利義昭が征夷大将軍であったから、・・・
        • でも秀吉は当時の「最高権力者」だったから、欲すればなんとでもできたはず。
      • 要は征夷大将軍の価値に気付かなかっただけだと思う。
        • 天皇が任命する官職としては「太政大臣＞関白＞征夷大将軍」という認識しかなかったのでは。
  
  

  秀吉の遺骨が埋葬されている五輪塔	秀吉が祀られている神社
  遺言によって阿弥陀ヶ峰山頂（五輪塔）に葬られた。明治３０年(1897)発掘時に遺骨が確認された	徳川家康によって破壊された神社は、明治１３年(1880)豊国神社として再興された