東京から引っ越してきた人の作った京都小事典（豊臣時代の京都）

（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

豊臣時代の京都 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

応仁の乱を経て京都は焼け野原状態になった。これを整備し直したのが豊臣秀吉（勿論一人だけの功績ではないですが）。

「豊臣時代（前後を含む）の京都」を概観してみたい。

御土居
- 天正１４年(1586)天下を統一した豊臣秀吉（豊臣姓を賜り太政大臣になった年）は、荒れ果てた京都の整備に着手した。
- その代表が御土居（おどい）である。
  - 目的は「外敵の来襲に備える防塁と、鴨川の氾濫から市街を守る堤防を構築する」ためであった（と考えられている）。
  - 天正１９年(1591)に着手（工事の得意は秀吉のことですから、すぐに概ね完成した（と思われる））。
    - いつ頃まであったかと言うと、江戸時代前期（寛文１０年(1670)頃）には逐次取り除かれていった。
    - 元和偃武以降来襲を考えなくてよくなった、別に鴨川の治水も進み、御土居が無い方が経済的往来が便利になる、などが背景。
  - 全長約２３ｋｍ、高さは３.6～５.4ｍ、厚さは約１８～２０数ｍ。
  - 膨大な物のように思えるが、歴史上京都が最もやせ細った時期でもある（下の御土居の図はイメージ、厳密な測定ではない、あしからず）。

御土居の全貌（青線が御土居）	平安京と御土居の関係（かなり小さくなったことがわかる）

えらく細長い京都になったものだ	（注）平安京の条坊図は各町を正方形で示したため、実際よりはかなり横長の図になっています。注意が必要です

長坂口近くの御土居跡（玄琢下、旧土居町）	最北の御土居跡（堀川通竹殿上ル）	紫野の御土居跡（御前通蘆山寺上ル）

上の地図の「①地点」。京都の北西角を護っていた。御土居の形が最もよく残っている地点	上の地図の「北方の尖った地点」。京都の北東角を護っていた。「説明板」も立っている	上の地図の「西側、平野神社の北地点」。この辺は御土居跡が数多く残っている

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聚楽第
- 秀吉が京都で造った最大の建築物が聚楽第である。
- 秀吉が「政庁兼邸宅」として天正１５年(1587)に完成させ、妙顕寺城（下の写真参照）から移った。
  - 天正１９年(1591)聚楽第は「秀次」の邸宅になったが、跡継ぎ問題で文禄４年(1595)秀次を切腹させ、わずか８年で聚楽第も破却した。
- 徹底的に破壊されたため、明確な位置も分からなかったが、最近の発掘で漸く位置が分かってきた（上の図に大体の位置を示した）。

聚楽第の前身妙顕寺城跡（押小路通小川西入ル）	聚楽第のイメージ（「NHK」のテレビ放映から）	聚楽第跡（中立売通浄福寺東入ル）

「本能寺の変」の後、天正１１年(1583)秀吉が上洛した時の「政庁兼城」として作った	秀吉らしく巨大なお城です。五重塔は（一瞬並存した４代目）「東寺」（らしい、貴重な瞬間）	「正親小学校」の中立売通側に建っている。中立売通大宮角など他にも「聚楽第関連石碑」はある

（参考）御所
- 皇居で説明したとおり、元弘２年(1332)以降「御所」は現在の位置に移っている（上のマップ参照）。
- したがって豊臣時代の御所は、平安時代と異なる。そもそも「聚楽第」が平安時代の御所の位置に建てられた。
  - 豊臣時代の天皇は聚楽第を見て「相当悔しかった」と思う。

（参考）二条城
- 二条城は聚楽第破壊の後、徳川家康が「上洛の際の宿所」として慶長８年(1603)竣工させた（したがって聚楽第とは並存しない）。
  - 二条城の位置も「一部平安時代の御所にかかる位置」にあたる。
  - 徳川時代の天皇は今度は二条城を見させられるはめになった。

（参考）東寺
- 東寺の五重塔はいつの時代も最も高い建物（京都の中心部）であり続けている。焼失してもすぐに再建される（下の表参照）。
  - でも最近は（五重塔＝５５ｍより高い）けしからん建物もできてきた。
  - 市中心部では、京都タワー＝１３１ｍ、京都ホテルオークラ＝５８ｍ、JR京都駅ビル＝約６０ｍ。物議を醸した。
    - 市郊外まで含めれば（令和２年(2020)現在）まだまだ他に高い建物はある。
- 豊臣時代は「４代目の五重塔」を（秀吉はかすかに）見た、ことになる。聚楽第とはほとんど並存していない。

施主	建築	焼失	健在年数	空白年数	補足説明
空海（嵯峨天皇）	元慶７年(883)	天喜３年(1055)	１７２	－－－	空海は完成を見ていない
源頼朝	文治２年(1186)	文永７年(1270)	８４	１３１
足利尊氏	永仁元年(1293)	永禄６年(1563)	２７０	２３
北の大政所	文禄３年(1594)	寛永１２年(1635)	４１	３１	木喰上人も施主の一人か
徳川家光	寛永２１年(1644)		（３７６）	９	年数は建築～令和２年(2020)	現在も「この３つ」は目立つ（航空写真）

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京の七口
- 豊臣秀吉が荒れ果てた京都を整備したものの２番目は七口。
- 『Wikipedia』によれば『京の七口とは、平安京につながる街道の代表的な出入口の総称として用いられる。七口として示される出入口の場所および名称は史料によっても異なり、定まっていない』とされている。
  - 長禄３年(1459)室町幕府が「京七口に新関」を設置した、という記録がある。そこでも「七口がどこか」の記録はない。
- 七口が最も明確になった時期がこの「御土居」が構築されたときである。
  - この時期は「京都の周りにしっかりと外壁（堤）」ができて、そこに七つの出入り口を作った（秀吉もよくやるものだ）。
  - この時の七口は、上の地図で「①～⑦」と記号を付けたところである。
  - そして名前は次のとおり（街道については街道を参照）。

名前		現在の地名	役割とその先の経路（in 京都市）
①	長坂口	北区鷹峯旧土居町	『山国街道』（氷室、京見峠へ抜ける道）の出入口
②	鞍馬口	出雲路橋の西詰	『鞍馬街道（下鴨中通から円通寺前を北上して鞍馬寺へ抜ける道）』の出入口で「鞍馬口通」の東端
③	大原口	今出川通寺町角	『若狭街道』（鯖街道）の出入口で「鯖街道口」（時代はもっと新しい）の道標がある
④	粟田口	神宮道通三条下る	『東海道・東山道』（三条大橋の西詰）の出入口で「粟田小学校」前に石碑がある、昔から「粟田口」として有名
⑤	伏見口	五条大橋西詰あたり	『伏見街道』（北端は現在の「本町通」）への出入口
⑥	鳥羽口	九条通千本東入ル	『鳥羽街道（北端は現在の「千本通」）・西国街道（東端は現在の「九条通」）』の出入口、羅城門跡近く
⑦	丹波口	千本通七条上ル	『山陰街道（東端は現在の「七条通」）』の出入口で、ＪＲ丹波口駅（五条下ル）に名前が残っている

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南北の通りの再分割
- 豊臣秀吉が荒れ果てた京都を整備したものの３番目は南北の通りの再分割。
- 条坊制で説明したとおり、秀吉は「御土居内の通りを整備する」に当たって、従前の南北の通り（小路に相当）の中間に通りを追加した（御幸町通、富小路通、堺町通、間之町通など）。
- これによって、南北の通りの間隔は約６０ｍ（東西の通りの間隔１２０ｍの半分）になった。

「東西の通り」（空色）：昔のまま（丸、竹、夷、二、押）

「南北の通り」（青色）：寺町（←東京極大路）、麩屋町（←富小路）、柳馬場（←万里小路）

　秀吉が拓いた（赤色）：御幸町、富小路、堺町、間之町

（注）「富小路」は「平安時代と秀吉以降（現代も）」とで位置が異なる