（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

北小路 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 平安時代の北小路
  • 平安京に条坊制を敷いたとき、（東西の通りとして）七条坊門小路（現在の「正面通」）と七条大路の間に北小路が造られた。
    • 特筆すべきは「官設市場である東市・西市」の中央を貫いている、ことであろう。
    • ただし「なぜ『北』小路」という名前が付いたかは、不明。
      • 「七条大路の北にあるから」という説を唱える人もおられるが、六条大路・五条大路には「その気配はない」。
    
    
  • 京都の街角写真でも参照している「森谷尅久、千宗室 監修「京都の大路小路」（小学館）」に「北小路」は記載されている。それによれば
    • 現在の北小路通は平安京の北小路にあたる。現在は「東は新町通から西は佐井西通西入ルに至る」とある。
  • 昭文社の地図「京都」にも「北小路通」は記述されている。
    
    
  • とは言え、「東市・西市の衰退」以降「北小路」の名前が使われることは少なくなった。
    • 「西市」は、平安時代中期（１０世紀）、右京の低湿地による人口低減に伴って、市は廃れた。
      • 人々は「東市」を利用した。
    • 「東市」は、平安時代末期、律令国家の衰退に伴って、市は廃れた。
      • 商業が芽生え、三条・四条に「民間の市場」ができ、人々は近い市場を利用するようになった。
    • 東市・西市がなくなって、人々の足は「北小路」から遠のいた。
    
    
  • 現在の「北小路通」も目立つところがない。
    • 西本願寺の東に「北小路町」を残す。
      • 「北小路町」について言えば、（中京区）烏丸二条の近くにある「北小路町」との関係は不明。
    • その他、東本願寺、龍谷大学があるくらいで、観光客が足を向けることはない。
    • 「京の通り名わらべ唄丸竹夷」でも「北小路」は歌われない（「とおりすぎ」られてしまっている）。

平安京条坊制で見られる「北小路」	下京区北小路町
勿論、東は「東京極大路」、西は「西京極大路」まで繋がっていた	北小路通と堀川通を跨ぐように「北小路町」がある（GoogleMap）

独自の「通り名表示板」（京都では珍しい）	西本願寺の「北小路門」	「米屋町」の「仁丹町名表示板」
西本願寺の西側にある「北小路通」に住む人は通り名に愛着を持っているようです	西本願寺の「唐門」（国宝、北小路通に面して）の東側にあって北小路を跨いで建っている	西本願寺の東側北小路町の東に接する「米屋町」に「伝統的な町名表示板」が掲げられる

• 鎌倉時代〜室町時代の北小路
  • （上述のとおり平安時代末期から）右京・下京が衰退し、人々は一条通を越えて住むようになり、都部が北に盛り上がってきた。
    • その結果（必然的に生活しやすいように民間主導で）一条通の北側にも通りが造られるようになった。
      • 「条坊制に従えば」東西の通りの間隔は等間隔（約１２０ｍ）であるが、一条通の北側は等間隔になっていない（条坊制は無視された）。
      
      
    • その一つに今出川沿いの北小路がある。
      • 「一条大路の北にあるから」北小路という名前になったかと想像される。下京の北小路に較べて（直感的で）わかりやすい。
    
    
  • 歴史的に史料を追いかけても、一条通の北にある「北小路」はすんなり見つからない。
    • 室町時代の史料に「花の御所は、南は北小路、北は毘沙門堂大路（現在の上立売通）、東は烏丸小路、西は室町小路の東西一町・南北二町」とあり、「北小路」の名前が見られる。
      • これからわかるように、北小路は今出川の位置に造られた（今出川に沿って）のだろう。
        
        
      • 因みに、毘沙門堂大路も民間主導で造られている。まだ名前が「上立売」になっていない。
    • そしていつの頃からか名前が今出川通になったことで、「北小路」の名前は忘れられるようになった。
      • 正徳元年(1711)刊行の「山州名跡志」には「今出川通は一条通の北二町にある」との記事があるから、江戸時代初期にはもう「今出川通」と呼ばれていたらしい。
    
    
  • ということで、北の方の「北小路通」は今は残っていない。
    • 今出川通（＝北小路）を跨ぐように「北小路」を冠する町名が残っているくらいである。
      • 「元北小路町」（下京区北小路町と重複しないように「元」を付けたか）を始めとして、「北小路室町、北小路中之町、西北小路町」などがある。

上京区北小路室町	「元北小路町」	マンション「コト北小路」
交差点北小路室町の南側に拡がる	時折「こうした看板」に名前を残すのみ 「北小路室町」では痕跡を見つけられなかった	上京区「北小路中之町」（今出川通浄福寺東入ル）にあるマンションの名前に残っていた