（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

（京都大事典に記載されている） 民間信仰 　　　　　　　　　　(INDEX：京都大事典へ)

• 信仰全般に関する項目（５０音順）　　　　（索引へ）
  • 愛宕信仰：愛宕山に鎮座する愛宕神社の愛宕神（火神迦倶槌神）に対する信仰。
    • 元来「防火神」で現在も「火廼要慎」の護符は京都では効き目があるようです。７月３１日夜の「千日詣」には多くの人が登ってくる。
    • 室町後期から、本地仏を勝軍地蔵として「軍神」ともなり、武士の信仰を集めた。
  • 阿弥陀信仰：平安末期、源信が往生要集を著してから、顕在化した「阿弥陀の浄土への往生を願う」信仰。
    • 「阿弥陀の浄土」を彷彿させる平等院鳳凰堂造営も信仰の一環。一般大衆は「迎え鐘」などで浄土を想ったりする。現在でも阿弥陀信仰（仏）のすそ野は広い。
  • 稲荷信仰：稲荷大神（宇迦之御魂大神）に対する信仰。元来は「農耕神」。初午、１７日が縁日。
    • 伏見稲荷大社が京都で最古の社。中世以降は「商業神・工業神・屋敷神」の性格強め「キツネ」が神使となった。稲荷神社は多い。
  • 磐座信仰：古代信仰の一つ。神が降臨するとされる石を神の座として神聖視する。
    • 平安京造営の際、王城鎮護のため平安京の東西南北の４つの磐座を定めたのも、この信仰による。
    • 今となってみれば、信仰は薄く、磐座跡も「神仏混淆」していて「わかりにくい」。
  • 観音信仰：観世音菩薩（仏）に対する信仰。観音縁日は１８日。
    • 観世音菩薩は「法華経」に出てくる「阿弥陀如来の脇侍」で「補陀落浄土の主」。三十三身に変化して衆生を救い浄土に導く、とされる。
    • 後に「諸願を成就する仏」として信仰されるようになった。平安末期以降西国三十三所観音巡礼が人気を集めるようになった。
  • 庚申信仰：道教の信仰（短命にならないよう庚申の夜は寝ないで過ごす）による民間信仰。本来は、信仰の対象になる神仏がいるわけではない（下の写真参考）。
    • 平安時代は貴族の信仰で、清少納言（９４段）も夜を付き合っている。
    • 民間に広まったのは江戸期以降、各地に庚申堂（それに関連して庚申塔・庚申塚）が建てられた。
    • 京都では（神社の中）、八坂庚申堂、粟田庚申堂などが有名。
  • 荒神信仰：三宝荒神（陰陽道と習合した神）に対する信仰。元来は「護法神」。
    • 京都にもいくつか「神社・寺」がある（神仏混淆している）。民間では「火伏・竈の神」として祀られている。
  • 聖天信仰：聖天（大聖歓喜天、インド仏教の守護神）に対する信仰。密教と共に日本へ入ってきた。
    • 平安時代は、障害から護られて富貴を祈る修法の対象だった。
    • 江戸時代になって民間に広まり「夫婦和合・子授け・福徳」の神となった。
    • 京都では西陣聖天（雨宝院）が唯一の寺。この界隈は「聖天町」になっている。
    
    

    粟田庚申堂の庚申尊	荒神橋　　（索引へ）
    庚申信仰も「信仰対象」が習合したか、粟田庚申堂には庚申尊（「四猿像（八体の猿）」）が祀られている（堂内の写真は撮れなかった）	「清三宝大荒神（護浄院）」の通りは「荒神口通」と呼ばれるようになり、鴨川に架かる橋は「荒神橋」と名付けられた。京都で「荒神」は有名

    
    
  • 大黒天信仰：大黒天（密教の神「自在天」の化身）に対する信仰。元来は「戦闘神・忿怒神」。甲子の日が縁日。
    • 日本では大国主神と習合し「厨房の神・福徳の神」になった。
    • 京都では、松ヶ崎大黒天（都七福神）、泉涌寺雲龍院の大黒天が有名。共に「お寺」に祀られている。
  • 太子信仰：聖徳太子（個人）に対する信仰。平安時代には確立していた。清少納言も広隆寺を参詣している。「供養」が中心で「ご利益は明確でない」。
    • 鎌倉仏教にも取り入られたため京都にも「太子堂」は各所（寺の中）にある（六角堂、上品蓮台寺、法観寺）。中でも「広隆寺の太子堂」は太子道の語源になった。
  • 天神信仰：菅原道真（個人）の御霊に対する信仰。初めは「落雷除け、疫病除け」の信仰。今や「学問の神」。２５日が縁日。
    • 北野天満宮の創建についてはこちらが詳しい。天満宮（神社）は京都だけでも沢山ある。
  • 八幡信仰：平安時代、宇佐から石清水に勧請されたとき、祭神は応神天皇（個人）に付会された。そのとき以来、伊勢神宮に次ぐ「国家神」になった。
    • 元来は豊前宇佐の小児形の神に対する信仰で「穀霊神」。いろいろ経緯があり、石清水八幡宮の祭神は多種多様、京都にある八幡宮も多種多様。
    • さらに源義家が社前で元服したことから「清和源氏の守護神」になった。
  • 毘沙門信仰：毘沙門天（多聞天の別名、古代インドの北方守護の神）に対する信仰。寅の日が参詣日。
    • 仏教と習合して「仏法擁護の神、王城守護の軍神」として信仰されるようになった。
    • 京都では（お寺の中にある）鞍馬寺の毘沙門天が平安京の北方を護り、、東寺毘沙門堂（都七福神）、山科の毘沙門堂、出水の毘沙門さまが有名。
  • 福神信仰：海の彼方から来る神々に対する信仰。転じて「財宝をもたらす神」「福徳神」「長福神」。
    • 室町時代以降、商工業を営む都市民の間で「七福神」（恵比須、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋尊）として信仰された。京都にも都七福神がある。
  • 不動信仰：不動明王（五大明王・八大明王の主尊）に対する信仰。大日如来に代わって「行者を成仏させる仏様」。２８日が縁日。
    • 密教では「国家安泰・息災・増益」をもたらす修法があり、修験道の寺院では本尊として祀られる。仏教美術も多く黄不動・青不動・不動明王像はいずれも国宝。鳴滝の「岩屋不動」、北向不動明王、宇多天皇の亭子院（不動堂明王院）なども残る。
    • 民間では「除病延命・災変消除・水難火難除け」の利益を求めて祈られる。われわれは「狸谷山不動院」へ行って「狸谷不動尊」に祈る。名不動はこちらへ。
  • 弁財天信仰：弁財天（インド仏教の神）に対する信仰。仏教と習合して「護法神」に。
    • 妙音天とも呼ばれ「音楽の神」でもある。「出町妙音堂」には妙音弁財天が祀られている。
    • 後に七福神の一つになり「財宝の神」「技芸の神」として信仰を集めた。京都には「弁財天二十九所」がある。
  • 薬師信仰：薬師如来（仏）に対する信仰。「治病・息災・安産」を祈る。８日と１２日が縁日。
    • 奈良時代から信仰されている。延暦寺の本尊も薬師如来。上醍醐薬師堂、日野薬師、神護寺など有名どこが多い。名薬師はこちらへ。
  • 龍神信仰：龍神（八部衆の一つ、仏）に対する信仰。「降雨」を祈る。
    • 最も有名なのが神泉苑で、放生池に「善女龍王」を祀る。
    
    

    南岩倉の不動明王	出町妙音堂（弁財天）	神泉苑（善女龍王）　　（索引へ）
    平安京造営の際の「４つの磐座」の１つ「南岩倉明王院不動寺」。石像不動明王は空海作とも	相国寺の塔頭「大光明寺」の飛び地境内（出町柳）にある。本尊は「青龍妙音辨財天」とある	神泉苑の鳥居を潜ると「善女龍王」の幟がたくさん見える

    
    

• お地蔵さん（５０音順）　　　　（索引へ）
  • 地蔵信仰：地蔵菩薩（仏）に対する信仰。地蔵は「六道衆生の苦を救う」。縁日は２４日。
    • 末法思想と共に信仰が盛んになり、村や町の境界に祀られた。その「境界」は幼い子供の埋葬地でもあったため「地蔵は子供を守る」という信仰も出てきた。
    • 後白河法皇の頃、京の出口に六地蔵が安置され「旅の無事を祈る」信仰にもなった。
    • 京の町では８月の縁日に地蔵盆が行われるなど、町のあちこちに「地蔵は置かれている」。
  • と言うことで「京都大事典」には「多くの地蔵」が記載されています。以下に列挙。
    • 安産地蔵、延命地蔵、腹帯地蔵などは固有名詞ではなく「普通名詞」かと思われる程「あちこちに」置かれている。
    • 「地蔵は好まれる」ため「地蔵を名乗る他の神仏」も多い。油掛地蔵（天龍寺）は阿弥陀像、一言地蔵（壬生寺）は不動明王像、首振地蔵（清水寺地蔵院）など。
    
    
  • 跡追地蔵（上京区御前通一条下ル）
    • 「超円寺」の通称。近江堅田の「野田山別院」に観音像と共に祀られていたが叡山焼き討ちの兵火を逃れるために観音像だけ京都に避難させたところ、「地蔵も避難させよ」との夢があり「跡追で」地蔵像も京都に祀られるようになった。
  • 油懸地蔵（伏見区下油掛町）
    • 「西岸寺」に安置される。「名地蔵」の一つ。「油を掛けて祈願する」と願いが叶う。山崎の油商人の事跡に由来する。
  • 小町玉章地蔵（こまちたまずさ、東福寺退耕庵）
    • 地蔵堂に安置される「丈六の塑像地蔵坐像」（所謂「お地蔵さん」ではない）。胎内に小野小町の恋文（玉章）に収めている。渋谷越にあった旧小町寺からの移転（明治８年(1875)）。
    • 同じ伝承を持つ地蔵は、随心院にもある（小町地蔵）。
  • 駒止地蔵（下京区本塩竃町）
    • 「蓮光寺」の地蔵堂に安置される「石造地蔵尊」、「名地蔵」の一つ。平清盛の馬が止まった所で埋没した地蔵をみつけ「六条河原の処刑場」に置いたという由来から。
  • 勝軍地蔵
    • 「戦勝祈願」に始まり、「火伏（火除け）信仰」にもなったことで、あちこちに置かれている。
    • 「京都大事典」などによると『延文６年(1361)瓜生山山頂に安置、宝暦１２年(1762)聖護院宮忠誉親王が丸山に移した』とある。
    • さらに『明治初年まで愛宕山白雲寺にあった勝軍地蔵は金蔵寺に移された』ともある。
  • 染殿地蔵（新京極通四条上ル）
    • 「染殿院」の通称。このお寺の本尊になっている（秘仏）。染殿后（明子）がこの地蔵尊に祈願して清和天皇を安産したことに由来。
  • ソラマメ地蔵（東山区本町六丁目）
    • 「歯痛治癒祈願」の地蔵尊。この地蔵尊に治癒を祈願した猿が成就のお礼にソラマメを供えたとの伝説に由来。
      • 歯痛治癒祈願の地蔵尊は多い。歯形地蔵（御前通一条下ルの万松寺）、ぬりこべ地蔵（深草大門町）、西雲寺など。
  • 壷井地蔵（中京区西ノ京壷井町）
    • 「壷井」という井戸から地蔵尊像が発掘されたので、この地に「壷井地蔵」と称して安置された、という。
    
    

    勝軍地蔵堂（勝軍地蔵）	染殿院（染殿地蔵）	古蹟壷井地蔵尊　　（索引へ）
    「北白川山」山頂にある勝軍地蔵堂	「染殿地蔵尊」とあるが、本物の地蔵尊は拝めない（秘仏）	階段を降りて左を向けば「地蔵尊」が見えるのですが（名水壷井の左）・・・

    
    
  • 爪彫地蔵（南区上御霊町）
    • 「長福寺」に安置される。「砂岩に線刻した」地蔵尊（趺坐している）。大永７年(1527)の銘がある。西向寺にも同名の「爪彫地蔵」はある。
  • 長坂地蔵（宇治市木幡正中）
    • 「正覚院」に安置される。もと「長坂峠」（現日清都CCの入り口近く）にあって「旅人を守護していた」。明治１０年(1877)この寺に移された。
  • 中島の地蔵堂（右京区梅ヶ畑桧社町）
    • 「慰称寺」の通称。本尊地蔵菩薩像（重文）は「右肩を脱いだ立像」。
  • 深泥池地蔵（上善寺）
    • もとは深泥池のほとり（上賀茂神社領）にあった。明治の神仏分離令で地蔵（仏）は「上善寺」に移設された。「六地蔵」の一つ（鞍馬口地蔵）。
  • 目無地蔵（左京区岩倉上蔵町）
    • 「岩倉川」に架かる「目無橋」の傍らに立つ。傷みが激しく「目鼻が無い」ように見える。弥勒仏のようだが、延命地蔵として信仰されている。
  • 目疾地蔵（めやみ、四条通大和大路東入ル）
    • 「仲源寺」に安置される。治安２年(1022)定朝が四条橋東北に地蔵尊を祀ったのが始まり。安貞２年(1228)の洪水の際「止雨祈願」が行われ「雨止地蔵」の名が付いた。これが転じて「目疾」となり「眼病に霊感がある」として信仰された。
  • 木槿地蔵（上御霊前通室町西入ル）
    • 「西林寺」の通称。「名地蔵」の一つ。延暦年間(782-)の僧・慶俊が木槿（むくげ）の草むらから地蔵菩薩を感得した、のが由来。現在も境内に木槿の花が咲く。京都大事典は「もくげ」と読んでいる。
  • 屋根葺地蔵（壬生賀陽御所町）
    • 「新徳寺」の通称。もと「星光寺」の本尊。名前は、この地蔵を信仰していた老婆の家の屋根が壊れても若い法師が直してくれた、という説話に由来。新徳寺との関係は不詳。寺自体が一般には非公開。
  • 山端地蔵（やまばな、左京区山端森本町）
    • 「帰命院」の通称。「疫病平癒に効能がある」と信仰されている。もとは「雲母坂」にあり、後白河院が京の七口に安置した地蔵の一つ（と京都大事典は言う、６個より多かった or 鞍馬口でなく雲母坂だったか）。
  • 夢見地蔵（左京区仁王門通新高倉東入ル）
    • 「三福寺」に安置される。上東門院彰子が懐妊中、夢告に基づき定朝に彫らせたもので、安産地蔵として信仰される。
  • 輪型地蔵（下京区東塩小路町）
    • 「正行院」に安置される。「車石（輪型石）」で作った地蔵尊。もと竹田街道にあったのを移した。「交通安全守護」の信仰を集める。
    
    

    目疾地蔵	西林寺（木槿地蔵）　　（索引へ）
    繁華街「四条通」にひっそり立つが、意外と「眼病治癒祈願」に訪れる人は多い	「大権現」「不動明王」「地蔵大菩薩」「毘沙門天王」「神変大菩薩」の提灯が懸けてある

• その他の仏様　　　　（索引へ）
  • （お地蔵さん以外の）その他の仏様も
    • 民間信仰の対象になっている。
    • 「京都大事典」には以下の「３個」だけが記載されているが、他にも「もっとある」と思われます（不勉強につき私には列挙できませんが）。
    
    
  • 観音さま：本堂とか観音堂とかに安置されないで、多くの人に信仰されている観音
    • 濡手観音（ぬれてかんのん、清水寺の奥ノ院のお堂の裏）：水中に安置され「水を掛けて祈願」するので、この名が付いた。
  • お不動さん：明王堂、不動堂などに安置され僧侶がお経をあげてくれる訳ではないが「旅人から信仰」を受けている不動
    • 身代り不動（山中越え（山越え道））：寛政年間(1789-)僧宗鏡の建立。「旅人の危難を救助し安全を守護」したことから名付けられた。
      • 「安産地蔵」などと同じで「身代り不動」も普通名詞化していて、他にも「身代り不動」と呼ばれるお不動さんはおられる（例：法住寺など）。
  • 薬師さん：普通は立派なお寺の御本尊になっているのでしょうが、街中の道端のお堂で近くの人から信仰を受けている薬師
    • 布袋薬師（麩屋町通二条上ルの街角）：「大福寺」（天台宗、瑠璃光山利光院）に安置される。もとは大和国宮田郷にあって「布袋薬師」と呼ばれていたが、洛中に遷り「菩提薬師」と名を変えた。節分の日に近くの「商人が大福帳を持参」して「商売繁盛」を祈る。
    
    

    身代り不動	布袋薬師（大福寺）　　（索引へ）
    現在は「堂宇」の中に置かれているが、以前は「野ざらし」だったのだろう、傷みが激しい	今は正式には「菩提薬師」らしいが、幟には昔からの「布袋尊」と書かれて信仰されている

• 神様　　　　（索引へ）
  • 日本には「八百万の神」がおられますが、それに加えて外国から来られた神様もおられます（まあ仏様も外国から来られたのですが）。
    • そして神様も民間信仰の対象になっている。うまく整理されているとは思いませんが、「京都大事典」には以下の「神様」が記載されている。これも他にもっとありそうです。
    
    
  • 霊験で分類される神様
    • 竈の神：台所鎮火の神、竈の守護神。
      • 平野神社の祭神の一柱「久度神」（おくどさん）。最も有名なのが「愛宕神」。
    • 商売の神：京都小事典では御利益を祈願する神社で紹介した。京都大事典の「整理の仕方」は次のとおり。
      • 掛け金回収・借金返済：赤山禅院、清水寺の「首振地蔵」・地主神社、車折神社。
      • 業種別商売：菓祖神社（吉田神社末社、菓子）、薬祖神祠（薬）、若宮八幡宮社（陶器）、折上神社（山科、染織）、松尾大社・大酒神社（太秦、酒造）、愛宕神社（農業）、蚕の社（養蚕）、許波多神社（宇治市五ヶ庄、牧畜）、法輪寺（工業）、御金神社（金属）。
    • 道祖神：道路の魔を祓い、道行く人を守る神。
      • 陰陽道・仏教と習合し、猿田彦神に付会した。一般には関東地方に多い。
      • （習合した結果）幸神社、猿田彦神社もこの神様と見られる。「道祖」と名の付く道祖神社は、下京区薮下町、下京区不動堂町などにある。
    
    
  • 特定の民間信仰の神様
    • 志多羅神（しだらしん、御霊神の一種）：疫病の神。「設羅神」、「小藺笠神」（藺笠（いがさ）を被っている）、「八面神」（八面の仮面を付けている）とも呼ばれる。
      • 平安中期（天慶８年(945)）に九州から上洛してきて「騒動」になった。現在京都ではほとんど見られない。
    • 濡髪祠（ぬれがみのほこら、荼枳尼天（だきにてん））：縁結びの神。東山区新橋通大和大路東入ルにあって、祇園花街の女性の信仰を集める。
      • 荼枳尼天も難しく、日本に来てからは「白狐に乗る天女」になり（１）「死と血の匂いを漂わせる夜叉神」、または（２）「狐に縁の深い稲荷神」に結びついた。京都にも、法伝寺（真如堂）、興雲庵（建仁寺）、宗仙寺などに祀られている。いろいろな漢字が当てられている。
    • 魔多羅神（まだらしん、インドの神）：天台宗では、阿弥陀経や念仏の守護神。広隆寺（真言宗ですが）の「牛祭」で祀られる。
    • 常富明神（つねとみ、個人が霊）：円成寺内の小祠のこと。「常富惣五郎」（常照寺の学僧、前身は白狐）を祀る（享保３年(1718)）。
      • そもそも「明神さん」は難しい。広辞苑によれば「神を尊んでいう称」。要は「神様は皆、明神」。逆に言えば「その他の神様」とも言える。「常富明神」はその典型。
    • 子育て呑龍（個人が神様）：「子育ての神様」。呑龍（どんりゅう）は江戸初期の実際の僧侶ですが、難産の女性や難病の子供を救ったことで、大正時代に「呑龍像」（木像）が造られ信仰の対象になった。成道院（大宮通綾小路下ル）に置かれている。
      • 同種の信仰に「子育て地蔵」＝常林寺がある。
    
    

    菓祖神社	京都にもある道祖神	興雲庵の荼枳尼天　　（索引へ）
    吉田神社の末社。京都菓子業界の総意により創建された。御祭神は田道間守命と林浄因命	醒ヶ井通錦小路下ルの街角に、お地蔵さんのような顔をして祀られています	ここは「陀枳尼天」と書き「お稲荷さん」のように祈願されている

• 石　　　　（索引へ）
  • 「石」を信仰するのは「民間信仰の典型」。探せばもっとあるに違いない。
    • 石もお地蔵さんと一緒で、安産石、水分石などは固有名詞ではなく「普通名詞」かと思われる程「あちこちに」ある。それらについてはこちらにまとめた。
    
    
  • 陰陽石（いんようせき、伏見区宝福寺）：子に恵まれていない女性が跨ぐと妊娠するという。
    • 跨げ石（またげいし、梅宮大社）も同じ。
  • 瓜生石（うりゅうせき、知恩院の黒門前、「かしょうせき」とも）：この石に一夜にして瓜が実り「牛頭天王」の文字が記されていた。石自体は地中に埋まっているので見ることはできない。
  • 蜻蛉石（かげろういし）：宇治市莵道大垣内の路傍に置かれた「線刻阿弥陀三尊仏」（高さ２ｍ）。阿弥陀信仰の一つの形態。都名所図会にも描かれている。
  • 寛算石（かんざんせき）：伏見稲荷大社御旅所南方の小堂に置かれた石。H30cm×W160cm×D100cm。歯痛平癒の信仰があり「歯神様」と呼ばれている。
  • 北白川石仏：今出川通志賀越道の路傍に置かれた「白川石の阿弥陀如来像」（高さ１.5ｍ）。
  • 紫雲石：金戒光明寺塔頭「西雲院」にある。法然上人が比叡山から下りてきたとき、この地の傍で「紫雲光明の奇瑞」を見たことで、この地に「浄土寺院」（後の金戒光明寺）を開いたとある。
  • 神占石：今宮神社にある丸石。「阿呆賢さん」と呼ばれる「治療の石」。
  • 石敢当（せきかんとう）：「魔除けの石柱」。主に三差路などに建てられた。中国の土俗信仰。九条通河原町、西国街道（大山崎町役場付近）などに現存する。
  • 念仏石：東山区八坂上町の青龍寺（八坂の塔の北隣）の本堂前にある。後白河法皇の菩提を弔うため法然らが鐘の代わりにこの石を叩き、礼賛の調子をとったと伝えられる。
    
    

    瓜生石	北白川石仏	紫雲石　　（索引へ）
    背後に見えるのが「黒門」。柵の中に「石標（瓜生石の銘）」が建っている	山中越えをする旅人は必ず「祈った」はず。山中越えへ分岐する角に置かれている	西雲院の「お堂」の中に安置されている。この石に参拝する人は多い

• 風習・言い伝え　　　　（索引へ）
  • 風習＝「その土地のならわし。しきたり。習慣」で、習俗＝「社会のならわし。風習。風俗。または生活様式」と似ている。
    • 「民間信仰」とは少し異なる、験を担ぐ行為ということでは少し似ている。
      • 神社やお寺が行う年中行事とも少し異なる。
    • ということで、京都大事典に記載されている「京都の風習」をここで整理したい。
    
    
  • 正月の風習
    • 根引松（ねびきまつ）：京都の「門松」。松の根が見えるように、松を半紙で包み水引を掛けて、門口の柱に釘で打ち付ける。「行く末の無事」を祈る。\
    • 歳徳棚（としとくだな）：歳徳神（正月神）を迎える棚。台所の出入口の天井に吊らす。恵方の方向に向ける。食料の豊富なことと家内安全を祈る。
      • 島原や祇園では、棚の上に「箸紙とり（はしがみとり）」を供えて、常客の健康を祈る。
    • 蓬莱飾（ほうらいかざり）：以前は目出度い食品を盛り付けてお客に勧めたが、（現在は）蓬莱山（船）をかたどった縁起の飾り物。民間では床の間に飾る。
    • 若水：（民間では）元旦に汲む水のこと。（由緒正しき家では）元旦午前４時に汲む祝い水、この水で大福茶を沸かし雑煮を作る。「邪気を除く」意味がある。
    • 睨鯛（にらみだい）：正月三が日。祝膳の前に供える塩鯛（縁起物）。４日以降に食べる（食べ方はいろいろ）。
    • 松葉むしり：１月７日、子供たちに門松の松葉をむしらせる行事。「七日から 松葉むしりの 遊び哉」という俳句に詠われた。
    
    
  • 正月以外の風習
    • 餅搗習俗（もちつきしゅうぞく）：正月や節句など人生に重要な行事に餅を搗く風習。成人式、出産祝いなどにも餅を搗く。「おまんや」へ行けば「搗くべき日」が掲示されている。吉例。
    • 糸掛鯛（いとかけだい）：十日えびすの日に、商家では「恵比須さん」（掛け軸など）の前に供える鯛。商売繁盛を願う。
    • 小豆粥（あずきがゆ）：１月１５日に祝う粥。「年中の邪気を除く」ため。各神社で「御粥祭」が行われる。
    • 二日灸（ふつかやいと）：２月２日と８月２日に子供にお灸をすえる風習。「健康に過ごせる」ように。八坂神社へ行けばお灸のかわりに「額に犬印」を付けてくれる。
    • 花くそ：涅槃会（３月１５日）に各家で仏壇に供える供御。ご飯の残り粒を煎って黒豆や色あられと混ぜる。お釈迦様の入滅を偲ぶ。一般の家ではやらなくなっている。
    • 菖蒲葺き（５月５日）：菖蒲を軒端にさす風習。平安初期から始まる。菖蒲を葺くと、邪気を祓い火災を避けると伝える。
    • 虫干（夏の土用の頃）：カビや虫害を防ぐために書籍・衣服・寺宝を日に干し、風にさらす習俗。寺社では年中行事になっている。
    • 八朔（８月１日）：世話になっている主人・師匠・出入り先などに礼や贈り物をする風習。
    
    

    根引松	餅搗　　（索引へ）
    名店瓢亭に飾られた「根引松」（写真では左の柱）	最近は「おまんや」で「搗いた餅」を買ってくる。写真は１２月２９日の「美よし」、風物詩

    
    
  • 言い伝え＝京都人の生活文化を支え、あるいは規制する格言（非合理なものも多いが、京都人気質をよく表している）。京都大事典には以下の例が記述されている。
    • 月の光で針に糸を通せば裁縫が上手になる。
    • 帯を巻いたまま仕舞うと苦労が絶えぬ。
    • 服を着たままで繕う時は「脱いだ」と言ってから繕う。
    • ご飯を食べて横になると牛になる。
    • 祇園祭にキュウリを食べてはいけない。
    • ６月３０日には水無月を食べる。
    • 家を建てる時、雨降りに建てる方が家が栄える。
    • 家の庭に池をつくると病人が出る。
    • 十三詣りの帰りに渡月橋の上で振り返ると、智恵を返してしまう。
    • 盃にお酒を注いで、大文字の「大」の字を写して飲むと願いごとが叶う。
    • 葬式に出合った時に、親指を隠さないと、親の死に目に会えぬ。
    • ひな人形を長く飾っておくと娘の婚期が遅れる。
    • 夜に笛を吹くと蛇が出る。
    • 蛙に会ったら、旦那が帰る。
    • 実のなる植物を庭に植えてはいけない。
    • 彼岸花を持って帰ると火事になる。
    • 月末に蕎麦とおからを食べると、よく集金ができる。
    • 雲がお稲荷さんの方へいくと晴れ、愛宕さんの方へいくと雨になる。
    • 雲が清水さん詣りをすると必ず晴れる。
    • 新しい風呂ができて、一番風呂に入ると中風にならない。
    • 上賀茂神社の池に足をつけたら、しもやけにならぬ。
    • 上の歯が抜けたら便所の前で下へ向けて投げ、下の歯が抜けたら上へ向けて投げる。
    
    

    彼岸花	上賀茂神社の池（足つけ）　　（索引へ）
    沢山咲いていても、家へ持って帰ってはいけません（火事になる）	７／１１〜２３（2025年）の期間「足つけ夕涼み」があります（写真：ならの小川）